漫画制作や日常生活のなかで「紙」にこだわる方は多いものの、それを形作る「パルプ」との違いについてはあまり意識しないかもしれません。どちらも身近な存在ですが、用途や品質、使い心地に大きな影響を与えています。
本記事では、紙とパルプの基本的な違いや種類ごとの特徴、選び方のポイントをわかりやすく解説します。漫画や画材を選ぶ際の参考にもなる情報を、丁寧にまとめました。
紙とパルプの基本的な違いを押さえよう

紙とパルプはよく似た言葉ですが、その役割や意味にははっきりとした違いがあります。まずはこのふたつの基礎をおさえておきましょう。
紙とパルプの定義と役割
パルプとは、木材や古紙などから取り出した繊維を集めたもので、紙を作るための素材です。紙は、このパルプを主な原料として作られた、印刷や包装などさまざまな用途に使われる製品です。
つまり、パルプは紙の“もと”となる繊維の集合体、紙はそのパルプを加工して平らにした最終製品という違いがあります。パルプが持つ繊維の質や種類が、出来上がった紙の強度や触り心地、吸水性などを大きく左右します。
パルプから紙が生まれる仕組み
紙作りは、パルプを水と混ぜてドロドロの状態にし、それを薄く広げて乾燥させることから始まります。パルプは水とよく混ざりやすく、繊維同士が絡み合いながらシート状になります。
この工程では、水分を抜くことで繊維がしっかりと結合し、紙に必要な強度や厚みが生まれます。さらに、乾燥や圧縮などを加えることで、用途に合わせた表面のなめらかさや硬さが調整されます。紙が身近な製品になるまでには、こうした丁寧な作業が必要です。
パルプの種類と特徴
パルプには、大きく分けて化学パルプと機械パルプがあります。化学パルプは薬品の力で不純物を取り除き、純粋な繊維を取り出したものです。主にNBKPやLBKPと呼ばれる種類があり、白くて丈夫な紙に使われます。
一方、機械パルプは木材を機械で細かく砕いて作ります。これは繊維が短くて安価ですが、やや黄ばみやすく、新聞紙など大量に使われる紙に使われます。用途ごとにパルプの種類を選ぶことで、紙の品質やコストが調整可能です。
紙ができるまでの流れ
紙作りは、まず原料となる木材や古紙を細かく砕き、パルプを作ることからスタートします。その後、パルプを水で溶かして均一な液体にし、薄く広げてシート状にします。
このシートを乾燥させ、用途に合わせて表面を加工したり、表面に薬品を加えて強度や光沢を調整します。最終的には大きなロールや板状にカットされ、印刷や包装用の紙、漫画の原稿用紙などに生まれ変わります。
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紙の種類とパルプによる違い

紙には多くの種類があり、それぞれの用途や特徴によって選び方が変わります。主原料となるパルプの違いが、紙の性質や用途に大きな影響を与えます。
洋紙と板紙の違い
洋紙は、ノートやコピー用紙、印刷物など幅広く使われる一般的な紙です。板紙は、厚みがあり、梱包や箱、画材の台紙などに用いられます。どちらもパルプが原料ですが、その配合や製法が異なります。
洋紙は軽くてなめらかな表面が特徴で、筆記や印刷に適しています。板紙は強度や厚みが求められるため、層を重ねたり、パルプ以外の材料を加えて作ることもあります。用途によって選ぶべき紙の種類が変わるため、目的を明確にして選ぶことが大切です。
強度や用途に影響するパルプの選び方
紙の強度や用途は、どのパルプを使うかで大きく左右されます。たとえば、NBKP(針葉樹パルプ)は繊維が長く、強度や耐久性を重視する紙に向いています。LBKP(広葉樹パルプ)は繊維が細かく、印刷適性やなめらかな触り心地に優れています。
また、コスト重視の場合は機械パルプや再生パルプが使われることが多いです。選ぶ際は、以下のようなポイントを参考にするとよいでしょう。
- 強度を重視したい場合:NBKP中心
- なめらかさや印刷適性重視:LBKP中心
- コストを抑えたい場合:機械パルプや再生パルプ
LBKPとNBKPの特徴と使い分け
LBKPとNBKPは、紙の品質に大きく影響する主要な化学パルプです。LBKP(広葉樹パルプ)は、繊維が短く、表面がなめらかで印刷や描画に適しています。漫画の原稿用紙やノートなど、細やかな表現が求められる紙に最適です。
一方で、NBKP(針葉樹パルプ)は繊維が長く、紙にしなやかさと強度を与えます。強度が必要な包装紙や高級印刷紙、厚紙などによく使われます。用途や求める性能に応じて、両者をバランスよく配合することも一般的です。
パルプ種類 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
LBKP | なめらか、細かい | 漫画原稿、ノート |
NBKP | 強い、しなやか | 包装紙、厚紙 |
再生紙との違いとメリット
再生紙は、使い終わった古紙を再びパルプ状にして作る紙です。新品のパルプだけを使った紙と比べて、資源の節約やゴミの減量につながるという利点があります。
ただし、再生紙は繊維が短くなりやすく、やや強度や白さでは新品パルプの紙に劣る場合があります。しかし、最近は技術の進歩で質の高い再生紙も増えてきました。環境配慮やコスト面で選ぶ場合、再生紙は十分な選択肢になります。
紙の原料と製造方法のポイント

紙の品質や環境への影響は、どんな原料をどのように使って作られているかによって決まります。ここでは原料や製造工程の大事なポイントを見ていきます。
パルプの産地と原料のバリエーション
パルプの原料となる木材には、世界中でさまざまな種類があります。たとえば、北欧やカナダなど寒冷地の針葉樹は繊維が長く、しなやかで強い紙の原料となります。
また、農業廃棄物や竹、藁(わら)など、木材以外から作られるパルプもあります。これらは特定の用途や環境配慮の観点から活用されることが増えています。原料の種類や産地によって、紙の質感や性能も変化します。
薬品や添加物の役割
紙作りには、パルプを加工する段階でさまざまな薬品や添加物が使われます。たとえば、漂白剤はパルプを白くするために使われ、サイズ剤は紙の表面をなめらかにし、インクのにじみを防ぎます。
また、強度を上げるための補強材や、表面にツヤを出すコーティング剤なども加えられます。これらの添加物の種類や量を調整することで、用途に合わせた紙の仕上がりが実現します。
紙の仕上がりを左右する製法
紙の表面のなめらかさや強度、厚みなどは、製法によって大きく変わります。たとえば、カレンダー加工というローラーで圧縮する工程を加えると、表面がつるつるになり、より書きやすくなります。
また、多層構造にすることで、表面はなめらか、中はしっかりとした厚みを出すなど、用途ごとに細かな工夫がされています。どの製法を選ぶかによって、完成後の紙の特徴や使いやすさが左右されます。
環境に配慮した紙作りの工夫
近年、紙作りの現場でも環境への配慮が重視されています。たとえば、木材の合法的な調達や、再生資源の積極的な活用、排水の処理やCO2排出量の削減などの取り組みが進められています。
また、FSC認証などの環境ラベルが付いた紙も増えており、消費者が環境配慮型の紙を選ぶことも簡単になりました。こうした工夫をチェックすることで、環境に優しい選択ができます。
紙とパルプの違いが与える実生活への影響

紙とパルプの違いは、私たちの毎日の生活にも密接に関係しています。どのような選び方が生活の質や地球環境に影響するのか見ていきましょう。
トイレットペーパーなど身近な紙製品の選び方
トイレットペーパーやティッシュペーパーは、柔らかさや溶けやすさが重要です。一般的には、LBKPやNBKPの配合比率によってこれらの特性が決まります。
また、再生紙を使った商品も多く、環境への配慮やコストを考慮して選ぶことができます。用途や肌ざわりの好み、環境面など、複数の視点から選択しましょう。
肌ざわりや吸水性に関係する要素
肌ざわりや吸水性は、使用するパルプの種類や配合、製法が大きく関わります。繊維が細かいLBKPはなめらかな触感を生みますし、NBKPや機械パルプの割合が多いとしっかりとした厚みや強度が高まります。
さらに、特殊な表面加工や薬品の添加によって、吸水性や柔らかさも調整されています。実際に製品を触ってみて、自分の好みに合ったものを選ぶことが大切です。
エコな紙を選ぶためのポイント
環境に配慮した紙を選ぶには、以下のポイントが役立ちます。
- 再生紙やFSC認証マーク付きの紙を選ぶ
- 原料や製造方法が明記されている商品を選ぶ
- 過剰な包装や加工がないシンプルな商品を選ぶ
これらを意識することで、資源の有効活用や環境負荷の軽減に貢献できます。最近は店頭やネットでエコ商品が探しやすくなっています。
価格や品質の違いを見極めるコツ
紙製品の価格や品質の差は、パルプの種類や配合、加工方法によって生まれます。安価なものは機械パルプや再生パルプの割合が多く、やや吸水性や強度で劣ることがあります。
一方、高級な紙はNBKPやLBKPがバランスよく配合され、品質も安定しています。パッケージや説明書き、実際の使用感を比べて、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
比較ポイント | 安価な紙 | 高級な紙 |
---|---|---|
主な原料 | 機械パルプ・再生紙 | NBKP・LBKP |
特徴 | 吸水性や強度は控えめ | なめらかで丈夫 |
まとめ:紙とパルプの違いを知って賢く選ぼう
紙とパルプの関係や種類、製造方法の違いを知ることで、日々の生活や創作活動に合った紙選びができるようになります。特に、漫画や画材に使う場合は、書き味や強度、エコ性など多くの要素を考慮する必要があります。
自分の目的や価値観に合わせて、素材や認証マークなども参考にしながら紙を選ぶことで、満足のいく使い心地や仕上がりが期待できます。紙とパルプについて知識を深め、賢い選択を心がけましょう。
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