漫画やイラスト制作を始めると、どの絵の具や画材を選べば良いのか迷う方も多いのではないでしょうか。見た目や価格だけでなく、成分や使い心地にも注目することで、表現の幅が広がります。自分の作品に合った画材を知ることで、より理想に近い仕上がりを目指せます。この記事では、絵の具の成分や種類、それぞれの特徴についてやさしく解説しますので、画材選びに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
絵の具の成分と基本構造を知ろう

絵の具がどのような材料からできているかを知ることで、自分に合った画材を選びやすくなります。ここでは、絵の具の基礎的な構造や成分について解説します。
絵の具は顔料とバインダーでできている
絵の具の主な成分は「顔料」と「バインダー」です。顔料は色のもととなる粉末で、バインダーはその粉末を紙やキャンバスなどに定着させる接着剤のような役割を持っています。そのため、どんな顔料やバインダーが使われているかによって、発色や描き味が大きく変化します。
たとえば水彩絵の具の場合、顔料とアラビアゴムという天然の樹脂を混ぜて作られています。一方、アクリル絵具はバインダーとしてアクリル樹脂が使われるため、水に溶けやすく、乾くと耐水性が出るという特徴があります。このように、顔料とバインダーの組み合わせが絵の具それぞれの個性を生み出しています。
顔料と染料の違いを理解しよう
絵の具に使われる着色成分には、顔料と染料の2種類があります。顔料は水や油に溶けにくく、細かい粒子として存在しているため、鮮やかさと耐久性があります。一方、染料は水やアルコールなどに溶けやすく、紙や布によくしみこみますが、光や時間に弱い傾向があります。
たとえば、ポスターカラーやアクリル絵具は主に顔料が使われているため、色あせしにくく長く作品を残すことができます。しかし一部のマーカーや液体インクは染料が使われていることも多く、繊細な発色やグラデーションが得意ですが、直射日光などに弱いことがあります。用途や保存性を考えた上で、顔料と染料の違いを知っておくと良いでしょう。
固着材による絵の具の種類の違い
「バインダー」と呼ばれる固着材は、絵の具の種類を決める大きな要素です。どのようなバインダーが使われているかによって、描き心地や耐久性、仕上がりの特徴も変わります。
たとえば、アクリル絵具のバインダーにはアクリル樹脂が使われています。これにより速乾性が高く、乾くと耐水性が出る特徴があります。水彩絵具では天然由来のアラビアゴムが使われ、透明感と柔らかな発色が得られます。油絵具の場合、主に植物油がバインダーとなり、ゆっくり乾くため重ね塗りやグラデーションに適しています。自分の表現したい雰囲気や、描く対象によってバインダーの種類を選ぶことが大切です。
絵の具成分が作品の仕上がりに与える影響
絵の具の成分は、作品の完成度や保存性にも大きな影響を与えます。たとえば、顔料が細かいほど滑らかな塗り心地になり、色ムラも起こりにくくなります。また、バインダーの種類や配合によって、ツヤやマット感、発色の鮮やかさも変化します。
さらに、耐光性や耐水性も成分によって異なります。屋外で展示する場合や、長期保存を考えるなら、耐光性に優れた顔料やしっかりとしたバインダーが使われている絵の具を選ぶのが望ましいでしょう。絵の具の基本成分を知ることは、より満足のいく作品づくりにつながります。
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主な絵の具の種類と特徴

さまざまな絵の具が販売されていますが、それぞれに向いている用途や特徴があります。自分の目的や描きたい表現に合わせて選びましょう。
アクリル絵具の特徴と使い方
アクリル絵具は、速乾性と耐水性があるため、屋外のポスター制作や立体作品にも幅広く使われています。乾くと耐水性が出るため、重ね塗りやコラージュにも向いているのが特徴です。
また、透明から不透明までいろいろなタイプがあり、水で薄めれば水彩風に、厚く塗れば油絵のような質感も出せます。初心者でも扱いやすく、パレットや筆も水洗いで簡単に手入れできます。乾きが早いので、スピーディーに作業したい方や重ね塗りを多用したい方におすすめの絵の具です。
水彩絵具の種類と選び方
水彩絵具は、透明水彩・不透明水彩(ガッシュ)などの種類があります。それぞれの特徴を知ることで、表現したい世界観や作風に合った絵の具を選ぶことができます。
透明水彩は、紙の白さを生かして軽やかな透明感を出すのが特徴です。一方、ガッシュは隠ぺい力が強く、重ね塗りや修正もしやすいです。初心者の場合は、扱いやすいセットや少量パレットを選ぶと良いでしょう。色数やバリエーションも豊富ですので、作風や用途に合わせて選択できます。
|種類 |主な特徴 |
|:———–|:——————|
|透明水彩 |発色が鮮やか、透明感|
|ガッシュ |隠ぺい力が高い、マットな仕上がり|
油絵具の魅力と成分の違い
油絵具は、独特の重厚感や深みのある色調が魅力です。バインダーには主に植物由来の油が使われており、乾くまでに時間がかかるため、じっくりと細かい表現やグラデーションを作りやすいです。
また、乾燥後はしっかりとキャンバスに定着し、耐久性にも優れています。ただし、溶剤や専用の道具が必要だったり、換気を十分に行う必要があるなど、使い方には注意が必要です。奥行きや存在感を表現したいときに適した画材といえるでしょう。
日本画用絵具やテンペラなど他の画材
日本画用絵具は、岩絵具や水干絵具など、自然の鉱石や貝などから作られることが多いです。独特の質感や深い色合いが特徴で、和紙や絹にもよくなじみます。
また、テンペラ絵具は卵黄などをバインダーとして使う伝統的な画材です。発色が鮮やかで、乾くと耐水性が生まれます。これらの画材は扱いに少しコツがいりますが、他の絵の具にはない雰囲気や表現が可能です。伝統的な表現や個性的な作風を目指したい場合に向いています。
顔料とバインダーの種類と役割

顔料やバインダーにもいくつかの種類があり、それぞれ発色や耐久性、描き味に違いが出てきます。ここでは、その種類や特徴、役割について具体的に見ていきましょう。
有機顔料と無機顔料の違い
顔料には「有機顔料」と「無機顔料」という2つのタイプがあります。有機顔料は植物や合成樹脂から作られ、鮮やかな発色が得られるのが特徴です。代表的なものに、フタロシアニンブルーやキナクリドンレッドなどがあります。
一方、無機顔料は鉱石や金属から作られており、安定性や耐光性に優れています。例えばウルトラマリンブルーや酸化鉄などが無機顔料にあたります。有機顔料は色鮮やかですが、無機顔料は落ち着いた色味や耐久性を重視したい場合に選ばれます。
単一顔料と混合顔料の特徴
単一顔料は一種類の顔料だけで作られた絵の具で、色の再現性や透明感に優れています。混ぜたときにも色が濁りにくいため、繊細なグラデーションや透明感を表現したい場合に向いています。
これに対し、混合顔料は複数の顔料を組み合わせて作られています。発色やコスト面でバリエーションが広がりやすく、独特の色味を楽しむことができますが、色を混ぜた際にやや濁ることもあります。どちらを選ぶかは、描きたい表現や自分のこだわりによって決めると良いでしょう。
バインダーの種類と用途
バインダーは顔料を固定し、絵の具としての性質を決める重要な要素です。代表的なバインダーは以下の通りです。
・アラビアゴム(水彩絵具)
・アクリル樹脂(アクリル絵具)
・植物油(油絵具)
・卵黄(テンペラ)
それぞれによって、乾燥の速さや仕上がり、耐久性が異なります。用途や描きたい作品のイメージに合わせて、適したバインダーを選ぶことが大切です。
顔料が支持体に固定される仕組み
顔料が紙やキャンバスなどに定着するのは、バインダーの働きが大きな役割を果たしています。バインダーが乾く過程で顔料を包み込み、支持体としっかり接着します。
たとえば水彩の場合は、アラビアゴムが水分とともに乾いて顔料を紙に固定します。アクリル絵具の場合は、樹脂が固まることで顔料が表面にしっかりと残ります。こうした定着の仕組みを知っておくと、作品の保存や修復にも役立ちます。
絵の具の成分にまつわる豆知識と実験

絵の具の成分は、理科の実験や日常の生活の中でも活用されています。ここでは、身近な実験やお手入れ方法など、ちょっとした豆知識を紹介します。
絵の具の成分が理科実験に使われる理由
絵の具は、色素や水分、バインダーなどの成分が明確なため、理科の実験に最適です。たとえば、色の混ざり方や分離の仕組みを観察する際、絵の具の色素はとても分かりやすい材料となります。
また、小学校や中学校の授業で、色の三原色や色の分子の動きなどを学ぶための実験でも使われます。安全性や扱いやすさから、家庭や学校での理科実験にもよく利用されています。
ペーパークロマトグラフィーで顔料を観察
ペーパークロマトグラフィーは、紙に絵の具やインクをしみ込ませて、成分がどのように分かれていくかを観察する実験です。色の混ざり方や、1色に見えるインクが実は複数の色からできていることを目で確認できます。
用意するものは、ろ紙やコーヒーフィルター、絵の具や水性ペン、水だけです。ペーパーの端に絵の具を付けて水に浸すだけで、色素が広がり美しいグラデーションが現れます。自由研究などにもおすすめの実験です。
パレットや道具に残る絵の具の落とし方
絵の具を使った後、パレットや筆に残った絵の具をしっかり落とすことは、道具を長持ちさせるためにも大切です。絵の具の種類によって、落とし方が少し異なります。
・水彩・アクリル絵具:水で早めに洗い流す
・油絵具:専用の洗浄液や石鹸を使う
・テンペラ:ぬるま湯でやさしく洗う
特にアクリル絵具は、乾くと水では落ちにくくなるため、使い終わったらすぐ洗うのがおすすめです。道具を清潔に保つことで、作品作りも快適になります。
油性インキの特性と面白い実験例
油性インキは、耐水性や耐久性が高い一方で、乾きにくい特徴も持っています。水に溶けにくいため、描いた線がにじみにくいことから、漫画原稿のペン入れなどにもよく使われます。
実験では、油性インキと水性インキを同じ紙に書き、水滴をたらして違いを観察したり、油性インキで描いた後に水彩を重ねてみたりすると、成分の違いによる反応を見ることができます。簡単な実験ですが、成分の性質を体感できる楽しい方法です。
環境と安全性から考える絵の具の成分
絵の具に使われる成分は、環境や安全性にも関係しています。安心して使い続けるためにも、成分や取扱いに目を向けてみましょう。
透明水彩とアラビアゴムの環境負荷
透明水彩に使われるアラビアゴムは、アカシアの樹液由来の天然成分です。環境にやさしい一方で、過剰な採取は自然環境への影響が懸念されます。
持続可能な管理が行われている産地のものを選ぶことで、環境負荷を減らせます。また、廃棄する際も有害な物質を含まないため比較的安心ですが、大量の水彩絵具を一度に洗い流す場合は排水にも注意が必要です。
アクリル樹脂と環境への影響
アクリル絵具のバインダーであるアクリル樹脂は、石油由来の合成樹脂です。耐久性や使いやすさの点で優れていますが、廃棄時には微細なプラスチック粒子となり、環境問題となることがあります。
アクリル絵具の洗い流しはできるだけペーパーなどで拭き取ってから行い、排水に流す量を減らす工夫が求められます。また最近は、環境に配慮した成分のアクリル絵具も開発されつつあります。
油絵具に使われる油の特徴と注意点
油絵具のバインダーには亜麻仁油やポピーオイルなどの植物油が使われています。自然素材である点は良いのですが、絵の具に含まれる一部の顔料や、洗浄に使う溶剤などは取り扱いに注意が必要です。
特に換気の悪い場所での作業や、廃液の処理には十分気を配る必要があります。油絵具の洗浄や廃棄には、専用の処理方法や回収サービスを利用し、環境への影響を考えた取り扱いを心がけましょう。
絵の具の安全な取り扱いと保管方法
絵の具は、成分によっては肌や呼吸器に刺激を与えることもあります。使用時は換気を良くし、手袋やエプロンを着用して肌への付着を防ぎましょう。
また、子どもの手の届かない場所に保管し、使用後はしっかりフタをして湿気や直射日光を避けて保管するのが基本です。絵の具が古くなった場合も、規定に沿った方法で処分するようにしてください。安全面と環境面の両方に配慮した使い方が大切です。
まとめ:絵の具の成分を知って画材選びをもっと楽しく
絵の具の成分や種類を知ることで、自分の作品に合った画材選びがしやすくなります。顔料やバインダー、環境面や安全性も考慮しながら、自分らしい表現を楽しんでください。
成分の違いによる発色や描き心地の変化を体験し、さまざまな画材に触れることで、創作活動はより充実したものになります。画材選びを通して、ぜひ新しい表現や発見にチャレンジしてみましょう。
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