絵の具と色鉛筆の重ね塗り!発色と立体感を出す手順と道具

イラストをもっと魅力的にしたいとき、絵の具と色鉛筆を組み合わせる手法はとても効果的です。絵の具だけでは描ききれない細部や、色鉛筆だけでは埋めるのが大変な背景を、お互いの長所を活かして補い合うことができます。この記事では、初心者の方でも失敗せずに立体感のある美しい作品を仕上げるための、具体的な重ね塗りのコツや手順、おすすめの画材を分かりやすく紹介します。

目次

絵の具と色鉛筆の重ね塗りで、発色と立体感を出すコツ

絵の具と色鉛筆を併用する技法は、多くのイラストレーターが愛用するテクニックです。異なる画材を重ねることで、単一の画材では表現しにくい複雑な色変化や、深みのある質感を出すことができます。まずは、それぞれの役割分担や性質の違いを知り、理想の仕上がりをイメージすることから始めましょう。

絵の具は下地、色鉛筆は描き込みに向く

絵の具と色鉛筆を併用する際の基本は、絵の具を「広い面の着色」に使い、色鉛筆を「細かな描写」に使うという役割分担です。絵の具は水分を含ませて伸ばすことで、広い面積をムラなく、かつスピーディーに塗ることができます。これを下地として活用し、画面全体の色の方向性や大まかな影の配置を決めてしまいます。

絵の具で塗った下地が乾いた後に色鉛筆を重ねると、色鉛筆特有の「線」の力が活きてきます。キャラクターの髪の毛の流れ、瞳の中のハイライト、服の繊維の質感といった精密な描き込みは、鉛筆状でコントロールがしやすい色鉛筆の得意分野です。絵の具が作る柔らかな色のグラデーションの上に、色鉛筆でシャープなディテールを加えることで、画面の密度が劇的に上がり、立体感が強調されます。この「面」と「線」の組み合わせが、クオリティを底上げする鍵となります。

水彩とアクリルで相性が少し変わる

下地として使う絵の具の種類によって、その上に重ねる色鉛筆の描き心地や定着具合は異なります。透明水彩絵の具を下地にする場合、紙の表面の凹凸がそのまま残るため、色鉛筆の芯が紙に引っかかりやすく、色がしっかり乗ります。水彩特有の透明感を活かしながら、色鉛筆で少しずつ影を濃くしていく作業は非常に相性が良く、繊細な表現に向いています。

一方、アクリル絵の具を下地にする場合は注意が必要です。アクリル絵の具は乾くとプラスチックのような耐水性の膜を作るため、表面がツルツルになりがちです。特に厚塗りをした上からは色鉛筆が滑ってしまい、色が乗りにくいことがあります。アクリルガッシュのようなマットで不透明な絵の具であれば、比較的色鉛筆も馴染みやすいですが、使う絵の具の「乾燥後の質感」を把握しておくことが大切です。アクリルを使う際は、水を多めにして薄く塗ることで、紙の目を潰さずに色鉛筆との馴染みを良くすることができます。

透明感を残すか、しっかり塗るかで手順が決まる

重ね塗りの手順を考えるときは、最終的にどのような質感を目指すかを明確にしましょう。光が透き通るような透明感のあるイラストにしたい場合は、絵の具をかなり薄めに塗り、紙の白さを活かすのがコツです。その上から色鉛筆を優しく重ねることで、下の色が透けて見え、深みがありつつも軽やかな発色が得られます。

逆に、重厚で油絵のようなしっかりとした質感を出したい場合は、不透明な絵の具で下地を塗りつぶし、その上から色鉛筆で強い圧をかけて描き込みます。この場合、色鉛筆を塗り重ねることで絵の具の境界線をぼかしたり、ハイライトを強く入れたりして、ドラマチックな立体感を作ることができます。透明感を重視するなら「薄く、淡く」、重厚感を重視するなら「濃く、力強く」というように、目指す完成図によって絵の具と色鉛筆のバランスを調整してください。

仕上がりは紙の種類で大きく変わる

絵の具と色鉛筆の重ね塗りにおいて、土台となる「紙」の選択は非常に重要です。色鉛筆は紙の表面にある細かな凹凸(紙目)に顔料を定着させるため、全く凹凸のないツルツルの紙では色がうまく乗りません。かといって、凹凸が激しすぎると絵の具を塗った際に水が溜まりやすく、コントロールが難しくなります。

重ね塗りに最も適しているのは、ある程度の厚みがあり、表面に適度なザラつきがある「中目」の水彩紙やミックスメディア用の用紙です。これらの紙は水分を吸収しても波打ちにくく、色鉛筆を塗り重ねても紙の表面が削れにくい強さを持っています。また、紙の色自体が少しクリームがかっているものや、真っ白なものなど、紙の地色も発色に影響を与えます。自分の好みの発色と描き心地を見つけるために、いくつかの紙を試してみるのが良いでしょう。

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絵の具×色鉛筆の重ね塗りがはかどるおすすめ画材

重ね塗りのクオリティを左右するのは技術だけでなく、道具の質も大きく関係します。ここでは、絵の具の上に重ねても発色が良く、プロの現場でも選ばれている信頼の画材を紹介します。

ホルベイン アーチスト色鉛筆

日本のメーカーであるホルベインの色鉛筆は、芯が柔らかくしっとりとした描き心地が特徴です。顔料が非常に豊富で、絵の具の上からでも滑るようになめらかに色が乗ります。

項目内容
特徴柔らかい芯で混色がしやすく、発色が鮮やか
おすすめ用途柔らかな肌の質感や、グラデーションの表現
公式サイトホルベイン公式サイト

ファーバーカステル ポリクロモス油性色鉛筆

世界中のアーティストに愛される最高級の色鉛筆です。芯が硬めで鋭く削れるため、精密な描き込みに最も適しています。

項目内容
特徴耐光性に優れ、紙への定着力が抜群に高い
おすすめ用途輪郭の強調、細部の描き込み、リアルな描写
公式サイトファーバーカステル公式サイト

キャンソン XL ミックスメディア(スケッチブック)

絵の具と色鉛筆、どちらにも対応できるよう設計された多目的用紙です。手頃な価格で練習用にも最適です。

項目内容
特徴水に強く、色鉛筆の乗りが良い表面の質感
おすすめ用途アイデアスケッチ、ミクストメディアの練習
公式サイトマルマン株式会社(国内販売元)

水彩紙(中目)ブロックタイプ

本格的な作品作りには、四方が糊付けされたブロックタイプの水彩紙がおすすめです。水を使っても紙が反りにくいのが利点です。

項目内容
特徴紙が波打たず、最後まで平らな状態で描ける
おすすめ用途じっくり時間をかける完成度の高い作品
公式サイトミューズ公式サイト(ランプライトなど)

仕上げ用フィキサチフ(定着スプレー)

重ね塗りをした画面は、色鉛筆の粉が浮きやすいため、完成後に定着スプレーをかけるのが基本です。

項目内容
特徴色の剥落を防ぎ、画面を保護する
注意点換気の良い場所で使用し、少量ずつ吹きかける
公式サイトホルベイン公式サイト(フィキサチフ)

練り消しゴム(細部の調整用)

紙を傷めずに色を吸い取ることができる練り消しゴムは、重ね塗りの修正やハイライト作りに欠かせません。

項目内容
特徴自由な形に変えられ、広い面から細部まで対応
おすすめ用途塗りすぎた色の調整、光の表現
公式サイトステッドラー公式サイト

白の色鉛筆(ハイライト用)

絵の具で描いた上から、一番明るい光を足すために白の色鉛筆は重宝します。不透明度の高いものを選びましょう。

項目内容
特徴暗い色の上の描き込みでもしっかり発色する
おすすめ用途瞳の輝き、水面の反射、髪の天使の輪
公式サイトカランダッシュ(ルミナンス6901など)

重ね塗りがきれいに見える手順は「薄く積む」がポイント

仕上がりを美しくするためには、一気に色を乗せるのではなく、層を重ねていく感覚を持つことが大切です。絵の具と色鉛筆のそれぞれの強みを活かすための、失敗の少ない標準的なステップを解説します。

絵の具で大まかな明暗と色を先に作る

まずは絵の具を使い、画面全体の大きな「光と影」の流れを作ります。この段階では細かい部分は気にせず、水を使って絵の具を薄く広げ、ベースとなる色を置いていきましょう。例えば、青い空を描くなら薄い水色を、人物の肌なら淡いベージュを塗るイメージです。

さらに、影になる部分には少し濃い色を置いて、大まかな立体感を作っておきます。絵の具でこの土台をしっかりと作っておくことで、後から色鉛筆で描き込む際のガイドラインになります。下塗りの段階で色が薄すぎると感じても、後から色鉛筆で補強できるため、最初は少し控えめに塗るのがコツです。絵の具を「色の下地」として捉え、全体を統一感のある雰囲気に整えていきましょう。

完全に乾かしてから色鉛筆を重ねる

絵の具を塗り終えたら、色鉛筆に移る前に「完全に乾かす」ことが非常に重要です。紙がわずかでも湿っている状態で色鉛筆を重ねると、芯が紙の繊維を傷つけてしまったり、色が濁ったりする原因になります。また、水彩紙の表面がふやけていると、色鉛筆の鋭い先端で紙が破れてしまうこともあります。

自然乾燥で待つのが一番ですが、急いでいる場合はドライヤーの弱風を遠くから当てるのも有効です。表面だけでなく、紙の芯までしっかり乾いているか、手の甲を軽く当てて温度を確認してみてください。ひんやりと感じる場合は、まだ水分が残っている証拠です。完全に乾いた状態から描き始めることで、色鉛筆の鮮やかな発色を最大限に引き出すことができます。

影から塗るとムラが減ってまとまりやすい

色鉛筆での描き込みを始める際は、最も暗い影の部分から手をつけるのがおすすめです。暗い場所の基準が決まると、中間のトーンや明るい部分をどれくらいの濃さで塗ればよいかが判断しやすくなるからです。影の部分に絵の具の同系色や、少し深みのある青・紫などを色鉛筆で重ねていくと、奥行きがグッと増していきます。

影の部分を先に整えることで、画面全体のコントラストが明確になり、描き込みのムラを防ぐことができます。明るい部分から先に塗り始めると、最終的に全体のバランスが明るくなりすぎてしまい、立体感に欠ける仕上がりになることが多いため、この「影から攻める」順番を意識してみてください。少しずつ色を積み重ねることで、理想の立体感に近づけることができます。

最後に色鉛筆で輪郭と質感を整える

仕上げの段階では、色鉛筆を使って輪郭線を強調したり、表面の質感を加えたりします。絵の具の塗りによって曖昧になった境界線を、色鉛筆でスッと引き締めるだけで、被写体の存在感が際立ちます。特に、目元や指先などの細かいパーツは、鋭く削った色鉛筆で丁寧に輪郭を整えましょう。

また、植物の葉の葉脈や、動物の毛並みといった細かな質感もこのタイミングで足していきます。最後に白の色鉛筆や、隠蔽力の強いホワイトの絵の具でハイライトを入れると、一気に命が吹き込まれたような仕上がりになります。色鉛筆を「仕上げの筆」として使い、全体のバランスを見ながら、最も見せたい部分に視線が集まるように微調整を行ってください。

にごりや紙荒れを防ぐために意識したいこと

重ね塗りは楽しい作業ですが、やりすぎると紙がボロボロになったり、色が濁って汚く見えてしまったりすることがあります。美しい状態を保つために、特に気をつけるべきポイントを確認しておきましょう。

水分が多いと紙が波打ちやすい

下地の絵の具を塗る際、水の量が多すぎると紙が過剰に水分を吸い込み、ボコボコと波打ってしまう「波打ち現象」が起きます。紙が波打った状態で色鉛筆を重ねると、凹凸の「凸」の部分にばかり色が乗り、「凹」の部分に色が届かないため、極端なムラの原因になります。

これを防ぐには、あらかじめ紙の四方をテープで固定する「水張り」を行うか、厚手の水彩紙を使用しましょう。また、絵の具を塗る際も一度に大量の水を置くのではなく、筆に含ませる水分量を調節して、紙に負担をかけないように意識してください。もし波打ってしまった場合は、完全に乾いた後に重い本などを乗せて平らに戻す工夫も必要です。

濃い色を一気に重ねると汚れやすい

早く仕上げようとして、色鉛筆の濃い色を最初から強い筆圧で塗り込んでしまうのは避けましょう。一度に厚塗りをしてしまうと、紙の目がすぐに埋まってしまい、その上から別の色を重ねようとしても色が弾かれてしまいます。また、厚く乗った顔料が手のひらで擦れて、画面の他の場所を汚してしまうこともあります。

重ね塗りの鉄則は「薄い層を何度も積み重ねる」ことです。優しい筆圧で何度も色を往復させることで、顔料が紙の繊維の奥まで定着し、濁りのない澄んだ色彩が生まれます。手間はかかりますが、この丁寧な作業が、最終的なイラストの透明感と深みを支えることになります。

油性色鉛筆は上から水彩をのせても溶けにくい

多くの色鉛筆は「油性」ですが、これは水に溶けない性質を持っています。そのため、色鉛筆で描いた上から水彩絵の具を塗り重ねると、色鉛筆の線が水を弾く「バチック(弾き絵)」のような効果が得られます。これを活かして、色鉛筆で細かい模様を描いてから、その上を絵の具でサッと塗ることで、模様を浮かび上がらせる表現も可能です。

ただし、逆に「色鉛筆の線を絵の具で馴染ませたい」と思っても、油性色鉛筆では不可能です。もし水に溶ける性質を求めるなら「水彩色鉛筆」を使う必要があります。自分の持っている色鉛筆がどちらのタイプかを確認し、水との反応を計算に入れて制作を進めるようにしましょう。油性の性質を逆手に取ることで、表現の幅はさらに広がります。

仕上げ前に試し塗りで相性を確認する

新しい紙や絵の具、色鉛筆を導入した際は、いきなり本番の作品に使うのではなく、必ず「試し塗り」を行いましょう。同じメーカーの画材でも、紙の種類が変わるだけで色の乗り方が驚くほど変わることがあります。また、特定の絵の具と色鉛筆の組み合わせで、色が変色したり、定着が悪かったりする場合もあります。

作品で使う予定の紙の端切れに、実際に絵の具を塗り、その上から色鉛筆を重ねてみて「色が沈まないか」「紙が毛羽立たないか」をチェックしてください。このわずか数分の確認作業が、本番での思わぬトラブルを防ぎ、安心して制作に没頭できる環境を作ってくれます。

絵の具と色鉛筆の重ね塗りは、手順と道具で仕上がりが変わる

絵の具と色鉛筆の重ね塗りは、手順を守り、適切な道具を選ぶことで、誰でも驚くほどクオリティの高いイラストを仕上げることができます。絵の具で作る柔らかな土台と、色鉛筆で刻む精緻なディテール。この二つの融合が、あなたの作品に唯一無二の深みをもたらしてくれるはずです。

まずは手持ちの画材で、小さな面積から試してみてください。色が重なる楽しさ、質感が変わる驚きを体験するうちに、自分なりの黄金比が見つかるはずです。今回ご紹介したコツを参考に、ぜひあなただけの色彩豊かな表現を追求してみてください。絵の具と色鉛筆が織りなす無限の可能性が、あなたの創作活動をより一層輝かせてくれることを願っています。“`

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ペンにこだわると、イラストがどんどん上達します。

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この記事を書いた人

漫画やアートで「これってどうしてこんなに心を動かされるんだろう?」と考えるのが好きです。色の選び方や構図、ストーリーの展開に隠れた工夫など気づいたことをまとめています。読む人にも描く人にも、「あ、なるほど」と思ってもらえるような視点を、言葉で届けていきたいと思っています。

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