自分で本を作る際、一番の悩み所は「ページがバラバラにならないか」という点です。製本において、のり付けは単なる接着作業ではなく、本の寿命を決める重要な工程です。特に「背の処理」と「乾燥」の仕方が、使い心地や見た目の美しさに直結します。基本を丁寧に行うことで、市販の本のように丈夫で開きやすい一冊を仕上げることができます。
製本でのりを使うやり方は「背の処理」と「乾燥」で仕上がりが変わる
製本の基本は、バラバラの紙を一つの「ブロック」として強固に固定することにあります。このとき、のりの選び方や塗り方一つで、完成後の本の開きやすさや耐久性が大きく変わってしまいます。特に「背」と呼ばれる接着面をいかに平滑に整え、適切な圧力をかけて乾燥させるかがプロのような仕上がりへの分かれ道です。ここでは、失敗しないための基本的な考え方について詳しく見ていきましょう。
のりは紙の種類で相性が変わる
製本に使用するのりを選ぶ際、最も重視すべきは紙との相性です。一般的なコピー用紙や漫画原稿用紙のような上質紙であれば、水分の多いのりでも比較的馴染みやすいですが、写真集のような光沢のあるコート紙は注意が必要です。コート紙は表面が樹脂などでコーティングされているため、一般的な事務用のりやでんぷんのりでは浸透しにくく、乾燥後にページが抜け落ちる原因になります。
このような特殊な紙には、合成樹脂を主成分とした製本専用の接着剤が適しています。また、作品を長期間保存したい場合は、酸を含まない無酸性(アシッドフリー)ののりを選ぶのが鉄則です。酸性ののりは時間の経過とともに紙を黄変させたり、脆くさせたりする性質があるからです。紙の厚みによっても最適な粘度は異なります。厚い紙を束ねる場合は、乾燥後も柔軟性が残るタイプの接着剤を選ぶと、本を開いた際に背が割れるのを防ぐことができます。作業を始める前に、使用する紙の端切れで接着テストを行うことで、失敗を未然に防ぐことができます。
背を揃えて固定するとズレにくい
のり付けの工程で最も失敗しやすいのが、紙の束が途中でズレてしまうことです。背の部分がガタガタの状態で固めてしまうと、完成後にページがめくりにくくなるだけでなく、のりが均一に行き渡らないため強度が極端に落ちてしまいます。まずは紙を平らな机の上でトントンと叩き、背のラインが一直線に揃うように整えましょう。
揃えた後は、クリップやクランプ、重しなどを使ってしっかりと固定します。この際、紙を直接挟むと跡がついてしまうため、不要な厚紙などを「当て紙」として挟むのが賢いやり方です。背の部分だけが少し露出するように固定すると、のり付け作業がスムーズに進みます。固定が甘いと、のりを塗った際の水分で紙がたわみ、ページ間に隙間ができてしまいます。隙間ができるとその部分にのりが溜まりすぎてしまい、乾燥後にデコボコした仕上がりになってしまいます。プロの製本現場でも「揃え」の工程に最も時間をかけると言われるほど、この準備段階が完成度を左右します。急がずに、横から見て全てのページが揃っているか確認を繰り返すことが大切です。
薄く重ねて塗ると割れにくい
一度に大量ののりを塗れば丈夫になると思われがちですが、実は逆効果です。厚すぎるのりの層は、乾燥するとカチカチに硬くなり、本を開いた瞬間にパキッと背割れを起こす原因になります。理想的なのは、薄い膜を重ねるようにして塗ることです。まず一回目の塗布では、紙の繊維の間にのりを染み込ませるイメージで薄く広げます。
刷毛やヘラを使い、中心から外側に向かって均一に伸ばしていくのがコツです。一度目が半乾きになったところで二度目を塗ると、弾力性と強度が両立した背が出来上がります。この時、のりがページの間に入り込みすぎないよう注意が必要です。入り込みすぎると、本を開いた際にページの内側までくっついてしまい、読みにくい本になってしまいます。また、のりの種類によっては乾燥後に体積が減る「肉痩せ」を起こすものもあります。これを計算に入れて、表面が滑らかになるように塗り進めましょう。薄く均一な層を作ることで、乾燥後の柔軟性が保たれ、何度開いても壊れないしなやかな本に仕上がります。
乾燥中の圧締で波打ちを防げる
のり付けが終わった直後の本は、水分を吸収して紙が非常に不安定な状態にあります。そのまま放置して乾燥させると、紙が水分を含んで膨張し、背の部分が波打ちを起こしてしまいます。これを防ぐために不可欠なのが「圧締(あってい)」、つまり圧力をかけた状態で乾燥させる工程です。
のりを塗った背の部分を保護しながら、本全体を重い板やプレス機、あるいは辞書などの厚い本で挟み込みます。この状態で数時間から一晩じっくりと乾燥させることで、紙の繊維が整った状態で固定され、平滑で美しい背が完成します。乾燥時間は季節や湿度によって変わりますが、表面が乾いているように見えても内部には水分が残っていることが多いため、十分な時間をかけることが大切です。乾燥を急いでドライヤーなどを使うと、急激な収縮によって背が反ってしまうことがあるため避けましょう。じっくり時間をかけて圧力をかけ続けることが、プロのような仕上がりに近づくための最後のハードルです。この手間を惜しまないことで、長年愛読しても形が崩れない丈夫な自作本が完成します。
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製本のりと補強材のおすすめ
製本の仕上がりを左右するのは、用途に合った資材選びです。ここでは、初心者の方から本格的な製本を目指す方まで、使い勝手の良い定番のアイテムを紹介します。
| 商品名 | 特徴 | 公式サイト |
|---|---|---|
| コニシ 製本用接着剤 ボンドB1 | プロも愛用する製本専用品。柔軟性が高く背割れしにくい | コニシ公式サイト |
| コニシ 木工用ボンド(速乾) | 入手しやすく扱いやすい。厚紙の接着にも便利 | コニシ公式サイト |
| 寒冷紗(麻入り・背固め用) | 背の強度を劇的に高める補強用の布 | キハラ公式サイト |
| ニチバン 製本テープ | 背の仕上げや補修に。カラーバリエーションが豊富 | ニチバン公式サイト |
コニシ 製本用接着剤 ボンドB1
製本専用に開発されたこの接着剤は、乾燥後もしなやかな弾力性を保つのが最大の特徴です。一般的なボンドよりも粘度が調整されており、紙の繊維にしっかりと浸透しながら、本を開いた時の衝撃を吸収してくれます。ページ数の多い自分用資料や、本格的な画集を作る際には欠かせない一品です。
コニシ 木工用ボンド(速乾タイプ)
手軽に製本を楽しみたい場合に便利なのが、速乾タイプの木工用ボンドです。水性で扱いやすく、乾燥後は透明になるため、多少のはみ出しも目立ちません。ただし、単体では少し硬くなりすぎる傾向があるため、ページが非常に多い本よりは、薄めの冊子やメモ帳作りなどに向いています。
でんぷんのり+木工用ボンドの混合のり
和綴じや古書の修理などで使われる手法です。でんぷんのりの「ゆっくり乾く」という特性と、ボンドの「強力な接着力」を合わせることで、作業時間を確保しつつ丈夫に固定できます。自分好みの粘度に調整できるため、紙の種類に合わせた最適なのりを作りたいこだわり派におすすめです。
寒冷紗(麻入り・背固め用)
背の強度を一段階上げるための資材です。のりを塗った背にこの布を貼り付けることで、紙同士がバラバラになるのを物理的に防ぎます。麻が入っているものは特に丈夫で、辞書のような厚い本にも使われます。
裏打ち寒冷紗テープ(背の補強用)
あらかじめ寒冷紗に紙が裏打ちされているタイプです。布の隙間からのりが染み出しすぎるのを防いでくれるため、初心者でも綺麗に補強作業が行えます。背の厚みに合わせてカットして使うだけで、格段に耐久性がアップします。
ニチバン 製本テープ(背の補修・補強用)
のり付け後の背を美しく装飾し、保護するためのテープです。強粘着で剥がれにくく、表面がラミネート加工されているため汚れにも強いのが特徴です。背表紙の色を変えることで、本のジャンル分けにも役立ちます。
製本のり付けで剥がれにくくする作業手順とコツ
道具が揃ったら、実際の作業に移りましょう。のり付けは「丁寧な準備」と「確実な手順」が成功の鍵を握ります。ページが抜け落ちない、一生ものの本を作るための具体的なステップを解説します。
背を揃えてクランプで固定する
本を作る作業で一番最初に行うべき大切なステップは、ページを完璧に揃えて固定することです。紙の束を手に持ち、平らな場所で上下左右を叩いて整えます。このとき、わずかでも背がデコボコしていると、後で塗るのりが均一に届かず、特定のページだけが抜け落ちる原因になってしまいます。
揃え終わったら、製本用クランプや大型のクリップで背の両端をしっかりと挟みます。この際、紙の端が歪まないように、厚手の段ボールや木の板を当て板として使うのが良い方法です。挟む強さは、紙が手で動かない程度にしっかりとかけます。固定する場所は、背の端から1ミリから2ミリほど紙を突き出させた位置にします。こうすることで、のりを塗る面がしっかりと露出し、作業がしやすくなります。この準備段階で妥協をしないことが、最終的にページが一切ズレない美しい一冊を完成させるための土台となります。
のりを均一に伸ばして浸み込みを整える
固定ができたら、いよいよのり付けです。まずは刷毛に適量ののりを取り、背の端から端まで一定の力で塗っていきます。このとき、のりをただ表面に載せるのではなく、紙の束の断面に「刷り込む」ような感覚で動かすのがコツです。
特に重要なのは、のりが全ての紙の端に満遍なく行き渡っていることです。のりが薄すぎる場所があると、そこからページが剥がれてしまいます。逆に一箇所に固まってしまうと、乾燥後にそこだけが硬くなってしまい、本を開いた時に違和感が生じます。縦方向に塗った後は、仕上げに横方向にも軽く刷毛を動かして、表面を平滑に整えます。のりの浸透を助けるために、刷毛を細かく叩くように動かすのも効果的です。紙の種類によっては一度で吸い込みきってしまうこともあるため、表面がしっとりと潤う程度の厚みを維持しましょう。丁寧な塗り作業は、本の開きやすさと耐久性の両立に欠かせない工程です。
寒冷紗を貼って背の強度を上げる
のりを塗った直後の、まだ乾かないうちに寒冷紗という補強用の布を貼り付けます。これは麻や綿を粗く編んだ布で、これを一枚挟むだけで本の背の強度は劇的に向上します。布の網目にのりが入り込むことで、紙の束と布が一体化し、引っ張る力に対して非常に強くなるからです。
寒冷紗を背のサイズに合わせてカットし、のりの上にそっと置きます。その上からさらに少量ののりを追い塗りして、布を完全にのりの中に埋め込むように馴染ませます。このとき、空気が入らないように指の腹やヘラで軽く押さえるのがポイントです。布の繊維が縦横に走ることで、本を繰り返して開閉しても背が割れるのを防いでくれます。特にページ数が多い厚い本を作る場合には、この工程を省かないことが長く愛用できる本に仕上げるための鉄則です。寒冷紗がしっかりと背に定着したことを確認してから次の工程へ進みましょう。
乾燥後に段差を整えて表紙を付ける
のりと寒冷紗が完全に乾いたら、仕上げの段階です。乾燥後は、のりの厚みや布の端によって、背の部分にわずかな段差や毛羽立ちができていることがあります。これらをそのままにして表紙を付けると、仕上がりがボコボコして見栄えが悪くなってしまいます。
必要であれば、細かい目のサンドペーパーやカッターを使って、背の表面を軽く整えます。ただし、削りすぎてのりの層を壊さないよう注意が必要です。表面が滑らかになったら、表紙と本体を合体させます。表紙の背の内側にものりを塗り、本体の背とピタリと重なるように貼り合わせます。ここでズレが生じると本全体が歪んでしまうため、慎重に位置を合わせましょう。貼り合わせた後は、再び重しを乗せて数時間ほど放置し、表紙が完全に定着するのを待ちます。最後の乾燥を丁寧に行うことで、背表紙がピシッと真っ直ぐな、美しい仕上がりの自作本が完成します。
製本のりのやり方を再現するための要点まとめ
理想の製本を叶えるためには、紙と対話するように丁寧な工程を積み重ねることが不可欠です。のり選びでは紙の質を考慮し、作業中は何よりも「揃え」と「固定」を徹底しましょう。のりを均一に塗り、寒冷紗で補強を施したら、最後は焦らず時間をかけて重しを乗せて乾燥させることが、成功への一番の近道です。
これらの要点を一つずつ実践することで、手作りならではの温かみと、市販品に負けない堅牢さを備えた本が作れるようになります。あなたの素敵な作品が、美しい一冊の形になることを応援しています。
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