日々の喧騒を忘れ、没頭できる「大人の塗り絵 色鉛筆」選びは、作品の仕上がりだけでなく、描く時間そのものの質を左右します。初心者から上級者まで、自分にぴったりの道具を見つけることで、彩り豊かな癒やしの時間はさらに深まります。本記事では、後悔しない選び方と厳選した逸品を詳しく解説します。
大人の塗り絵に最適な色鉛筆を選ぶための基準
芯の硬さと描き心地で選ぶ
芯の硬さは、塗り心地を左右する最も重要な要素の一つです。色鉛筆の芯には大きく分けて「硬質」「中硬質」「軟質」の3タイプが存在します。
硬質の芯は、HBの鉛筆のように芯が削れにくく、非常に細い線を維持することに長けています。緻密な曼荼羅や、植物の細い茎などを描写する際には、硬質の芯が威力を発揮します。一方で、広い面積を均一に塗るのには力が必要となり、長時間使用すると手が疲れやすいという側面もあります。
対照的に、軟質の芯は、クリームやバターのように紙の上を滑る感覚が特徴です。少ない筆圧でしっかりと色が乗り、広い面積を素早く、ムラなく塗りつぶすことができます。
特に海外ブランドの油性色鉛筆に多いこのタイプは、色の重ね塗りが容易で、重厚な油彩画のような質感を作り出すことが可能です。ただし、芯が柔らかいため減りが早く、こまめに削る必要がある点は留意しておくべきでしょう。
中硬質の芯は、これら両者のバランスをとったもので、多くの国産定番セットに採用されています。大人の塗り絵を始めたばかりの方は、まずは中硬質の芯で基本を学び、自分の筆圧や好みの絵柄に合わせて、硬質や軟質を使い分けていくのが理想的な流れです。
描き心地は作品を完成させるまでのモチベーションに直結するため、自分の手に馴染む感覚を大切にするのが、長く楽しむための秘訣となります。
発色の良さと重ね塗りのしやすさ
大人の塗り絵において、色の鮮やかさと深みは、作品の完成度を決定づけるポイントです。良質な色鉛筆は顔料の純度が高く、紙に乗せた時に見たままの色が美しく発色します。
安価な学童用との最大の違いは、この「色のノリ」にあります。上質なものは、軽いタッチでも紙の凹凸に顔料がしっかり入り込み、白浮きすることなく鮮やかな色彩を表現できます。
また、大人の塗り絵の醍醐味であるグラデーションを作るためには、「重ね塗りのしやすさ」が欠かせません。優れた色鉛筆は、異なる色を何層も塗り重ねても、色が濁りにくいという特徴があります。
例えば、青の上に黄色を薄く重ねて複雑な緑色を作るような「混色」の作業において、下の色が剥がれたり、ワックスが固まって色が乗らなくなったり(ワックスブルーム)することが少ないのです。
重ね塗りが得意な色鉛筆を選ぶことで、限られた色数から無限の色調を生み出すことが可能になります。特に風景画や肌の質感など、微妙な色の変化を表現したい場合には、この重ね塗りの適性が作品の質を大きく左右します。
まずは、数色を使ってグラデーションのサンプルを作り、色がどのように混じり合うかを確認することが、納得のいく道具選びの近道となります。
セットの色の数とバリエーション
色鉛筆を選ぶ際、セットの色の数は悩ましい問題です。一般的には12色、24色、36色、そして100色を超えるセットまで幅広く展開されています。大人の塗り絵に挑戦する場合、最初の一歩として最もバランスが良いのは「36色セット」と言われています。36色あれば、基本的な原色に加え、中色や肌色、自然界に多い中間色が揃っており、混色を駆使することでほとんどの絵柄に対応できます。
一方で、花の絵や複雑な風景画をメインに楽しみたい場合は、72色以上の多色セットが大きな武器になります。多色セットのメリットは、自分で色を作る手間が省けるだけでなく、そのメーカー特有の繊細なニュアンスカラーを楽しめる点にあります。
例えば、同じ「ピンク」でも、桜のような淡い色から鮮やかなマゼンタまで揃っていると、作品に圧倒的な立体感とリアリティが生まれます。
しかし、色が多ければ良いというわけではありません。色数が多すぎると、どの色を使うべきか迷ってしまい、作業が止まってしまうこともあるからです。
また、収納スペースや持ち運びの利便性も考慮する必要があります。まずは36色程度で基本を固め、特定のジャンルに特化したいと感じた時に、単色で必要な色を買い足していくスタイルも、経済的かつ効率的な選び方の一つです。
予算に合わせた価格帯の検討
色鉛筆の価格は、1本数十円のものから、セットで数万円するプロ仕様のものまで、驚くほどの開きがあります。この価格差は主に、使用されている顔料の質と量、そして芯を支える木材の品質に由来します。予算を検討する際は、「自分がどれくらい本格的に取り組みたいか」という熱量と、1本あたりの単価を照らし合わせることが重要です。
初心者の方が、いきなり数万円のセットを購入するのは勇気がいりますが、あまりに安価なものを選ぶと、色が乗らなかったり芯がすぐに折れたりして、塗り絵自体の楽しさを損なってしまうリスクがあります。
大人の趣味として楽しむのであれば、まずは中価格帯(3,000円〜6,000円程度)の国産ブランドや、信頼性の高い海外メーカーのエントリーモデルから始めるのが最も賢明な判断と言えるでしょう。
もし長期的な趣味として定着させる自信があるなら、最初からプロ向けの高品質なセットを選ぶのも一つの手です。高品質な色鉛筆は、力を入れなくても美しく塗れるため、結果的に紙を傷めず、手への負担も軽減されます。
また、プロ仕様の商品は多くの場合「単色販売」がされているため、使い切った色だけを補充しながら、一生モノの道具として育てていく楽しみも得られます。初期投資は高くても、長く使うことを考えれば、実はコストパフォーマンスに優れた選択になるのです。
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大人の塗り絵におすすめの色鉛筆7選
【ファーバーカステル】ポリクロモス色鉛筆|プロ仕様の高品質
世界中のプロアーティストに愛される、油性色鉛筆の金字塔です。芯が硬めで形が崩れにくいため、繊細なラインの描写から広い面の塗り込みまで、これ一本で完璧にこなせます。耐光性にも優れ、完成した作品を長く美しく保ちたい方に最適です。
| 商品名 | ファーバーカステル ポリクロモス色鉛筆 |
|---|---|
| 価格帯 | 36色 約10,000円〜 |
| 特徴 | 芯が硬く細密描写に強い。圧倒的な耐光性と鮮やかな発色。 |
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【三菱鉛筆】ユニ・カラー|クリアな発色が魅力の定番セット
日本のメーカーらしい、緻密で均一な品質が自慢の色鉛筆です。透明感のあるクリアな発色が特徴で、重ね塗りをしても色が濁りにくいのが魅力。日本人の肌色に馴染む色展開も豊富で、初心者からベテランまで誰にでも扱いやすいスタンダードな一品です。
| 商品名 | 三菱鉛筆 ユニ・カラー(uni COLORED PENCIL) |
|---|---|
| 価格帯 | 36色 約4,500円〜 |
| 特徴 | 日本製の安心感。クリアな発色と優れた定着性。 |
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【ホルベイン】アーチスト色鉛筆|発色が鮮やかで混色が自在
プロの要望に応えて開発された、非常に柔らかい芯が特徴の油性色鉛筆です。顔料を贅沢に使用しているため、まるで絵具で描いているような濃厚な発色が楽しめます。色が混ざりやすく、自分だけの中間色を作る楽しさを追求したい方に強くおすすめします。
| 商品名 | ホルベイン アーチスト色鉛筆 |
|---|---|
| 価格帯 | 36色 約9,000円〜 |
| 特徴 | 芯が非常に柔らかく、厚塗りが可能。混色性能が極めて高い。 |
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【トンボ鉛筆】色辞典|自然界の色を再現した美しい全90色
「自然界の色」をテーマに集められた、繊細なニュアンスカラーが魅力のシリーズです。ブック型のパッケージも美しく、所有する喜びを感じさせてくれます。他にはない絶妙な中間色が揃っているため、特に植物や風景をモチーフにした塗り絵と相性抜群です。
| 商品名 | トンボ鉛筆 色辞典(IROJITEN) |
|---|---|
| 価格帯 | 30色セット 約3,500円〜 |
| 特徴 | 中間色が豊富で美しい。インテリアに馴染むブック型ケース。 |
| 公式サイト | 公式サイトはこちら |
【プリズマカラー】プレミア|バターのように滑らかな描き心地
アメリカで絶大な人気を誇る、極めてソフトな芯の色鉛筆です。紙の白地が見えないほど濃密に色が乗り、ブレンディング(色の境界をぼかす作業)が容易に行えます。力強い色彩表現を好む方や、リアルなイラストを目指す方に最適な選択肢です。
| 商品名 | プリズマカラー プレミア(旧イーグルカラー) |
|---|---|
| 価格帯 | 72色 約12,000円〜 |
| 特徴 | 圧倒的な芯の柔らかさ。重ね塗りとブレンディングに最適。 |
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【ステッドラー】カラトアクェレル|水彩画風も楽しめる水彩色鉛筆
描いた後に水筆でなぞることで、水彩画のような表現ができる色鉛筆です。そのまま塗れば普通の色鉛筆として、水を加えれば淡い透明感のある作品に仕上がります。一粒で二度美味しい、表現の幅を広げたいアクティブな表現者にふさわしい道具です。
| 商品名 | ステッドラー カラトアクェレル水彩色鉛筆 |
|---|---|
| 価格帯 | 36色 約6,000円〜 |
| 特徴 | 水に溶ける水溶性芯。色鉛筆と水彩の併用が可能。 |
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【カランダッシュ】パブロ|プロも愛用する優れた耐光性と発色
スイスの職人技が光る、最高級の油性色鉛筆です。芯の強さとカバー力のバランスが絶妙で、どのような紙質にもスムーズに色が乗ります。また、世界で最も厳しい基準の一つである耐光性テストをクリアしており、一生ものの作品を残したい方に選ばれています。
| 商品名 | カランダッシュ パブロ |
|---|---|
| 価格帯 | 40色 約15,000円〜 |
| 特徴 | スイス製の精密な品質。プロ仕様のカバー力と耐光性。 |
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自分に合う色鉛筆を比較するための重要ポイント
油性と水性の特徴を比較する
色鉛筆選びの最大の分かれ道は「油性」か「水性」かという点にあります。一般的に色鉛筆としてイメージされるのは「油性色鉛筆」です。これは芯の顔料をワックスやオイルで固めたもので、水に溶けない性質を持ちます。発色が安定しており、塗り重ねることで深い艶や質感を出すのに適しています。
ほとんどの大人の塗り絵は油性色鉛筆を想定して作られており、初心者の方がまず手にするべきは、扱いやすく失敗の少ない油性タイプと言えます。
一方、「水彩色鉛筆(水性)」は、描いた後に水を含ませた筆でなぞることで、色が溶け出し水彩画のような風合いに変化します。これの利点は、色鉛筆の細かい描写力と、水彩の淡く広い着色力を併せ持っていることです。
背景をふんわりとぼかしたり、グラデーションを水で馴染ませたりといった、油性では難しいテクニックが簡単に実現できます。ただし、塗り絵の紙質によっては水を使うとシワになってしまうため、紙との相性を確認する必要があります。
どちらが良いかは、最終的にどのような仕上がりを目指したいかによります。こってりとした重厚な絵に仕上げたいなら油性、透明感のある柔らかな雰囲気を好むなら水性が向いています。
最近では、主役のモチーフを油性で描き、背景を水性でふんわり仕上げるという合わせ技を楽しむ方も増えています。自分の好みのスタイルに合わせて、この2つの特性を慎重に比較検討することが重要です。
芯の直径と細密描写の可否
大人の塗り絵には、非常に細かく複雑な図案が多く含まれています。そのため、芯の太さ(直径)も重要な比較ポイントになります。一般的な色鉛筆の芯の直径は約3mmから3.8mm程度ですが、このわずかな差が描き心地に影響を与えます。
芯が細めのものは、先端を鋭く削ることで、髪の毛一本一本や花の雄しべのような極細のラインを正確に描き込むことができます。特に硬めの芯で直径が標準的なものは、細密描写の持続力に優れています。
反対に、芯が太めのものは、広範囲を効率よく塗るのに適しています。太い芯はそれだけ顔料が多く含まれているため、塗り心地にボリューム感があり、紙の目を埋めるスピードも早くなります。
海外ブランドの高級色鉛筆には芯が太いものが多く、これは重ね塗りやブレンディングを前提とした設計になっているためです。細密な描写を重視するか、それとも絵画的な厚みを重視するかによって、最適な芯の太さは異なります。
もし、緻密な図案と広い風景の両方が含まれる塗り絵に挑戦するなら、芯が適度に硬く、鋭く削っても折れにくいタイプを選ぶのが正解です。
一方で、芯が太く柔らかいタイプを選ぶ場合は、細部用に硬質の細身タイプを数色買い足して併用すると、描写の幅が劇的に広がります。自分の持っている塗り絵本が、どの程度の細かさを求めているかを観察し、それに適応できる芯のスペックを見極めることが大切です。
耐光性による色あせにくさ
時間をかけて丁寧に仕上げた塗り絵の作品は、できるだけ長く美しく保管したいものです。ここで重要になるのが「耐光性」という基準です。耐光性とは、日光や蛍光灯の光にさらされた際に、色がどれだけ退色しにくいかを示す指標です。安価な色鉛筆や特定の顔料(特にピンクや紫系)は、光に弱く、数ヶ月壁に飾っておくだけで色が抜けて白っぽくなってしまうことがあります。
プロ仕様の高級色鉛筆の多くは、この耐光性を数値化して公表しています。例えば、カランダッシュやファーバーカステルの最高級ラインでは、各色鉛筆の軸に星印などで耐光性のランクが刻印されています。
星の数が多いほど、数十年から百年単位で色が変わらないことを保証しています。大人の塗り絵を単なる練習ではなく、「作品」として保存したい、あるいは額装して飾りたいと考えているのであれば、この耐光性の高さは外せない条件となります。
耐光性が高い色鉛筆は、使用されている顔料自体が高価で希少なため、製品の価格も高くなる傾向があります。しかし、せっかくの努力が時間とともに消えてしまう悲しさを考えれば、重要な色だけでも耐光性の高いブランドで揃える価値は十分にあります。
購入前にメーカーのカラーチャートを確認し、どの程度光に対する強さがあるかを把握しておくことは、作品の価値を守るための賢いステップとなるでしょう。
単品で買い足しが可能か確認
色鉛筆をセットで購入した後、必ず直面するのが「特定の色だけ早くなくなる」という問題です。空の色を塗るための水色や、木の葉を塗るための緑、そしてハイライトや混色に多用する白などは、他の色に比べて圧倒的なスピードで短くなっていきます。
この時、セットを買い直さなければならないのか、あるいは1本単位で補充できるのかは、ランニングコストに大きく関わります。
主要な有名メーカー(ファーバーカステル、三菱鉛筆、ホルベインなど)の多くは、画材店やインターネット通販で単色販売を行っています。1本単位で購入できるメリットは、お気に入りの色を惜しみなく使えることだけではありません。既存のセットにはない、自分好みの特殊な色を少しずつ増やしていくという、コレクションの楽しみも生まれます。
反対に、単色販売がないセットを選んでしまうと、一色がなくなっただけでセット全体のバランスが崩れ、使い勝手が悪くなってしまいます。
大人の塗り絵を長期的な趣味として楽しむなら、身近な店舗や信頼できるネットショップで、そのメーカーの単色扱いがあるかを必ず確認しておきましょう。
特に輸入品の場合は、国内に安定した流通ルートがあるかどうかが重要です。「いつでも1本から補充できる」という安心感があれば、より大胆に、より自由に色を使いこなすことができ、結果として表現の幅がより一層広がることにつながります。
色鉛筆を長く愛用するための注意点と活用方法
専用の鉛筆削りを使用する
色鉛筆の芯は、一般的な事務用の鉛筆に比べて非常にデリケートです。特に大人の塗り絵で使用するような軟質の色鉛筆は、芯が折れやすく、不適切な鉛筆削りを使うと内部で芯が粉砕されてしまうこともあります。
これを防ぐためには、そのメーカーが推奨する「専用の鉛筆削り」を使用することが最も確実な方法です。専用品は、色鉛筆の芯の硬さや太さに合わせて刃の角度が設計されており、無駄に芯を削りすぎることなく、最適な鋭さを生み出すことができます。
また、削り方にもコツがあります。力を入れすぎて急激に回すと、芯に過度な負荷がかかり、根元からポキッと折れてしまう原因になります。ゆっくりと優しく回し、芯の先が整う感覚を指先で感じながら削るのが理想的です。
さらに、カッターナイフを使って自分で削る方法(手削り)も、実は色鉛筆愛好家の間では推奨されています。手削りであれば、自分の好みに合わせて芯の露出具合を調整でき、芯を折るリスクも最小限に抑えることができます。
鉛筆削りの刃は消耗品です。切れ味が悪くなると芯が詰まりやすくなるため、定期的な買い替えやメンテナンスも忘れずに行いましょう。良い道具を良い状態で使い続けることは、描画時のストレスを減らすだけでなく、大切な色鉛筆を一本一本大切に使い切ることにもつながります。道具への愛着が、作品の丁寧な仕上がりにも反映されるはずです。
直射日光を避けて保管する
色鉛筆は繊細な画材であり、保管環境によってその品質が大きく左右されます。最も避けるべきは「直射日光」と「高温多湿」です。色鉛筆の芯に含まれるワックスやオイル成分は熱に弱く、直射日光が当たる場所に放置すると、芯が変質したり、乾燥してボロボロになったりすることがあります。また、木軸自体が乾燥して割れてしまい、中の芯が固定されなくなるケースもあります。
理想的な保管場所は、風通しの良い、温度変化の少ない日陰です。多くの場合、購入時のメタルケースや紙箱が保護の役割を果たしてくれますが、長期間使用しない場合は、さらに引き出しの中などに収納しておくのが安心です。また、多湿な環境も禁物です。
湿気を吸った色鉛筆は、紙への色の乗りが悪くなったり、カビの原因になったりすることもあります。日本の夏場などは特に注意が必要で、乾燥剤を一つ入れておくだけでも品質保持に役立ちます。
保管の際は、色鉛筆を寝かせた状態で置くのが基本です。立てて保管すると、落とした際の衝撃が芯に直接伝わりやすく、内部で芯が細かく折れてしまう「中折れ」のリスクが高まるからです。
持ち運びの際も、クッション性のあるペンケースに入れるなど、振動や衝撃から守る工夫をしましょう。丁寧に保管された色鉛筆は、何年経っても購入時と変わらない滑らかな描き心地を保ってくれます。
白い色鉛筆でブレンディング
多くのセットに含まれている「白い色鉛筆」は、単に白く塗るためだけのものではありません。大人の塗り絵において、白は「ブレンダー(混色剤)」として驚くべき効果を発揮します。
例えば、二つの色の境界線に白を重ねて塗ることで、色が滑らかに混ざり合い、美しいグラデーションを作ることができます。これは「バニッシング」と呼ばれる技法で、紙の白い目を埋め、作品に艶やかなテクスチャを与えることができます。
また、先に塗った色の上に白を軽く重ねることで、色のトーンを一段階明るくし、ハイライト効果を生み出すことも可能です。これにより、果実の光沢や金属の反射、柔らかな光の差し込みなどをリアルに表現できます。
白を使いこなせるようになると、塗り絵が単なる「色付け」から、光と影を操る「絵画」へと進化します。初心者の方が「白なんて使わない」と放置してしまうのは、非常にもったいないことです。
白の効果を最大限に引き出すためには、芯が柔らかく被覆力の高いメーカーの白を一本持っておくのがおすすめです。セットの白が使いにくいと感じたら、前述のホルベインやプリズマカラーのような、ブレンディング性能に長けたブランドの白を単品で買い足してみるのも良いでしょう。白一本で作品のクオリティが劇的に変わる体験は、大人の塗り絵の新しい楽しみ方を教えてくれるはずです。
筆圧を調整して質感を出す
色鉛筆一本で表現できるバリエーションを広げる鍵は、「筆圧のコントロール」にあります。
大人の塗り絵を始めたばかりの方は、一定の強い力で塗りつぶしてしまいがちですが、筆圧を段階的に変えることで、一つの色から驚くほど多くの表情を引き出すことができます。弱く優しい筆圧で塗れば、空気感のある淡い表現に。強く押し当てるように塗れば、力強く重厚な色彩になります。
筆圧の調整は、モチーフの質感を表現する際にも役立ちます。例えば、動物の毛並みを表現したい時は、細い線を一本一本重ねるように鋭い筆圧で描き込みます。
一方で、空や水のような広がりを感じさせたい時は、鉛筆を寝かせるように持ち、紙の凸凹を活かしながら軽い筆圧で円を描くように塗ります。このように、一つの色で濃淡のレイヤーを重ねていくことで、平面的な塗り絵に驚くほどの立体感が生まれるのです。
また、筆圧を意識することは、手の疲れを軽減し、集中力を維持するためにも重要です。常に全力で塗るのではなく、強弱のメリハリをつけることで、リズム良く作業を進めることができます。
まずは、一本の色鉛筆で「一番薄い色」から「一番濃い色」までのグラデーションを作る練習をしてみてください。自分の指先が伝える微妙な力の加減が、作品に魂を吹き込む最も強力なツールであることに気づくでしょう。
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ペンにこだわると、イラストがどんどん上達します。

