漫画やイラストを描くとき、「抽象」と「具象」という言葉を聞いて戸惑う方も多いかもしれません。実際、どちらの表現が自分に向いているのか、どう使い分ければよいか悩むこともあるでしょう。また、画材選びや表現方法についても迷いがちです。この記事では、抽象と具象の違いを分かりやすく解説し、それぞれの魅力や技法、画材の選び方まで丁寧に紹介します。自分に合った表現を見つけるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
抽象と具象の違いを分かりやすく解説

絵画やイラストの世界では、「抽象」と「具象」という言葉がよく使われますが、具体的にどう違うのか迷う方も多いはずです。それぞれの特徴や使い分け方、日本美術における位置付けについて詳しく見ていきましょう。
抽象と具象の基本的な意味
「具象」とは、目に見えるものや現実に存在するものを、できるだけ分かりやすく描く表現方法です。たとえば人や動物、風景などが何であるか一目で分かるように描かれている作品を指します。一方、「抽象」は現実の形にとらわれず、色や形、線などを自由に使って、感情や雰囲気を表現する方法です。何を描いているのかはっきりしない場合も多いですが、その分、見る人それぞれが自由に解釈できます。
この二つは対立するものではなく、表現の幅を広げるための異なるアプローチといえます。どちらを選ぶかは、伝えたいことや自分の個性、作品のテーマによって自然と決まってくるものです。
絵画における抽象と具象の特徴
具象画は、対象となるものの形や色を忠実に再現するのが特徴です。細かいディテールや質感にこだわった作品が多く、現実世界の「リアルさ」を大切にしています。これに対して抽象画は、具体的な形に縛られず、直線や曲線、色彩の組み合わせなどで構成されます。感情やリズム、雰囲気を重視し、時には偶然の表現が生まれることもあります。
また、具象画は鑑賞者が内容を直感的につかみやすい一方、抽象画は見る人によってさまざまな解釈ができるのが魅力です。どちらのスタイルも、それぞれの良さがあります。
抽象と具象の使い分け方
どのような場面で抽象と具象を使い分けるべきか悩むこともあるでしょう。たとえば、ストーリー性を重視したい場合は具象表現が向いています。キャラクターや背景の細部を描き込み、物語の世界観を伝えやすくなります。
一方、感情や雰囲気を強く出したいとき、または見る人それぞれに想像の余地を与えたいときは抽象表現が効果的です。作品のテーマや目的、伝えたいメッセージによって、両者を上手に使い分けることがポイントです。
抽象と具象の日本美術における位置付け
日本美術では、古くから具象と抽象の両方が発展してきました。たとえば、浮世絵や日本画などは具象的な要素が強いですが、水墨画や書道などは抽象的な表現も見られます。自然や季節の移ろいをモチーフにしつつ、余白の美や線・色彩の工夫で抽象性を持たせるのが特徴です。
日本独自の美意識や感性が、具象と抽象の境界をあいまいにし、両者を行き来する多様な表現を生んできました。現代美術でもその傾向は続いており、自由な発想が重視されています。
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具象画の魅力と代表的な画家

具象画には、見る人が作品の世界に入り込みやすいという大きな魅力があります。ここでは、具象画ならではの特徴や、歴史・有名な画家、そして初心者におすすめできる理由まで詳しく解説します。
具象画とは何か
具象画とは、実際に存在するものや人物、場所を、分かりやすく描いた絵のことを指します。たとえば風景画や肖像画、静物画などが具象画にあたります。写実的な表現からややデフォルメされたものまで幅がありますが、基本的には「何が描かれているか」がはっきり分かることがポイントです。
また、具象画はストーリーやテーマを伝えやすく、見る人にとっても親しみやすい表現方法といえます。初心者の方にとってもイメージしやすく、描き始めやすいのがメリットです。
具象画の歴史的背景と変遷
具象画は古代から現代に至るまで、世界各地で発展してきました。たとえば西洋絵画の場合、ルネサンス期には遠近法や光の表現技術が発達し、現実世界を再現することが重視されました。また、日本では江戸時代の浮世絵や明治以降の洋画など、具象表現の作品が数多く生み出されています。
しかし、時代が進むにつれて「現実をそのまま描くだけでなく、個性や感情を作品に込めたい」という考え方が広まり、徐々に抽象的な要素も取り入れられるようになりました。現在でも、伝統的な具象画から現代的なアレンジを加えた作品まで、幅広いスタイルが存在しています。
具象画の有名な画家と作品例
具象画を代表する画家は世界中にたくさんいます。たとえば、日本では黒田清輝や岸田劉生、西洋ではレオナルド・ダ・ヴィンチやレンブラントが有名です。彼らの作品は、人物や風景、静物を細やかに描写し、高い技術力とともに深い表現力を持っています。
以下に、具象画の有名な画家と代表作品を簡単にまとめます。
画家名 | 主な作品例 | 出身国 |
---|---|---|
黒田清輝 | 湖畔 | 日本 |
レオナルド・ダ・ヴィンチ | モナ・リザ | イタリア |
岸田劉生 | 麗子像 | 日本 |
これらの作品は、写実的な描写力だけでなく、人物や風景が持つ「空気感」や「物語性」も感じ取れる点が特徴です。
具象画が初心者におすすめの理由
具象画は、初めて絵を描く方にも取り組みやすいジャンルです。なぜなら、身近にあるものや好きな風景、人物をモデルにできるため、具体的なイメージが持ちやすいからです。描きたい対象を観察しながら進められるため、練習を重ねることで着実に上達を実感できます。
また、具象画を描く過程で「形のとらえ方」や「色の使い方」など、絵の基礎をしっかり身につけられるのも大きなメリットです。画材も豊富に選べるので、好みに合わせてチャレンジしやすいでしょう。
抽象画の特徴と表現技法

抽象画は、一見して何を描いているか分かりにくいこともありますが、その分、色や形、リズムを楽しむことができるジャンルです。ここでは、抽象画の特徴や種類、使われる画材や技法、そして鑑賞のポイントについて紹介します。
抽象画とはどのようなものか
抽象画は、現実に存在する形をそのまま描くのではなく、色や線など基本的な要素を使って自由に表現した絵です。たとえば、感情や音楽、風の流れなど、目に見えないものを色や形で表すこともあります。
このため、抽象画は「何を描いたか」ではなく「どんな雰囲気や感情を伝えたいか」に重きが置かれます。見る人によって印象が異なる場合も多く、自由な発想で楽しむことができます。
抽象画の種類と発展
抽象画にはいくつかのタイプがあります。代表的なものを簡単にまとめると、次の通りです。
- 幾何学的抽象:四角や丸、直線など規則的な形を使った表現
- 表現主義的抽象:感情や動きを色や筆致で表現
- ミニマルアート:極限まで要素を減らし、シンプルさを重視
20世紀初頭にヨーロッパで誕生した抽象画は、その後さまざまな流派やスタイルに発展しました。日本でも戦後、抽象表現が盛んになりました。
抽象画で使われる画材や技法
抽象画では、画材や技法の自由度がとても高いのが特徴です。たとえば、アクリル絵具や油絵具、水彩絵具はもちろん、クレヨンやコラージュ、スプレーなども使われます。筆の使い方も多様で、力強く塗ったり、流し込んだり、時には指やスポンジ、布などで描くこともあります。
また、絵具を重ねたり、にじみや混色の効果を利用したりすることで、偶然生まれる模様や質感を活かすことができます。独自の表現方法を見つける楽しさがあるのも、抽象画の魅力です。
抽象画を楽しむための鑑賞ポイント
抽象画は、「何が描いてあるか」を探すより、「どんな色や形が使われているか」「どんな気分を感じるか」に注目して鑑賞すると、より楽しめます。たとえば、色の組み合わせや全体のリズム、筆致の勢いなどを意識してみてください。
また、作者がどんな気持ちで描いたのか、どんなメッセージを込めているのかを想像してみると、作品を身近に感じられるでしょう。自分の感覚を大切にしながら、自由に味わうことが大切です。
画材選びで変わる表現の幅

使う画材によって、作品の雰囲気や表現の幅が大きく変わります。ここでは、具象画や抽象画に向いている画材や、初心者の画材選びのポイント、画材による表現の違いについて紹介します。
具象画に向いている画材と特徴
具象画では、細部を描き込んだり、色を重ねてリアルな質感を出したりするため、描写力に優れた画材が好まれます。たとえば、鉛筆や色鉛筆、油絵具、水彩絵具などが定番です。鉛筆や色鉛筆は、細かい線やグラデーションをコントロールしやすく、初心者にも扱いやすいです。
油絵具は色の厚みや深みが出せるので、重厚な作品に向いています。水彩絵具は透明感ややわらかな雰囲気が出しやすいので、風景画や花などにぴったりです。目的や好みに応じて使い分けてみてください。
抽象画におすすめの画材とその理由
抽象画では、表現の自由さを活かすため、多様な画材が使われます。アクリル絵具は発色が良く、乾きが早いので、重ね塗りやテクスチャーの表現がしやすい画材です。また、コラージュやミクストメディア(複数の素材を組み合わせる方法)にも向いています。
さらに、スプレーやクレヨン、インクなども抽象表現に適しています。描く道具も筆だけでなく、スポンジやパレットナイフ、布などさまざまなものを使って、偶然の効果や独自の質感を楽しめます。
初心者が失敗しない画材の選び方
初心者の場合は、使いやすく後片付けが簡単な画材から始めるのがおすすめです。たとえば、色鉛筆や水彩絵具、アクリル絵具は、準備が少なく気軽に使えるので人気があります。
画材を選ぶときは、次のポイントを参考にしてみてください。
- 目的に合った画材を選ぶ(例:細かく描きたいなら鉛筆や色鉛筆、発色を楽しみたいならアクリルや水彩)
- 予算や入手のしやすさを考慮する
- 実際に手に取って、持ちやすさや描き心地を試す
初めての画材はセット品を選ぶと、必要な道具がそろっていて安心です。
画材による表現の違いと比較
画材によって、描ける表現は大きく異なります。以下に、代表的な画材の特徴をまとめました。
画材 | 特徴 | 向いている表現 |
---|---|---|
鉛筆・色鉛筆 | 細部やグラデーション表現が得意 | 具象画全般 |
水彩絵具 | 透明感、にじみ効果 | 風景、静物、抽象 |
アクリル絵具 | 発色が良い、重ね塗り可能 | 抽象画全般 |
自分の描きたいイメージや表現方法に合わせて、画材を選ぶことがポイントです。
抽象と具象を行き来するアート思考のコツ
抽象と具象の両方を取り入れることで、表現の幅を広げることができます。ここでは、そのための思考法や発想トレーニング、日常から鍛える方法、実際の制作例について解説します。
表現の幅を広げる思考法
抽象と具象を自由に行き来できると、作品の魅力や多様性がぐっと増します。たとえば、具象画に抽象的な色使いや構図を取り入れたり、抽象画の中に現実的なモチーフをちりばめたりすることで、新しい発見が生まれます。
自分の「好き」を大切にしつつ、「なぜこの表現にしたのか」を意識することで、表現の幅が自然と広がります。時には失敗を恐れず、思い切って新しい方法に挑戦することも大切です。
具体と抽象を使い分ける発想トレーニング
具体と抽象を使い分けるには、普段から「これは何を伝えたいのか」「どの要素を強調したいか」を意識して描くと良いでしょう。たとえば、一枚の写真やモチーフを選び、まずはリアルに描き、その後で形や色を単純化・変形してみる練習が役立ちます。
また、普段見ているものの中から「本当に必要な要素」だけを抜き出して描くトレーニングもおすすめです。これを繰り返すことで、具象と抽象のバランス感覚が養われます。
日常から抽象化と具象化を鍛える方法
日常生活の中でも、抽象化・具象化の力を鍛えることができます。たとえば、通勤や通学途中に見かける風景を、色や形だけで捉えてみる、または写真を撮ってそれを簡単な線や色に落とし込んでみるのも効果的です。
さらに、好きな音楽や気分を線や色で表現するなど、身近なものから発想を広げてみましょう。こうした習慣を続けることで、表現の引き出しが増えていきます。
アート制作における抽象と具象の融合例
実際のアート制作では、抽象と具象を組み合わせることで、独自性のある作品が生まれます。たとえば、人物や動物の形を一部だけ残して、背景や周囲を抽象的に仕上げる表現方法があります。
また、物語性のある具象画の中に、感情やイメージを抽象的な色やパターンで加えることで、見る人の想像力を刺激することもできます。自分の制作スタイルに合わせて、いろいろな融合例にチャレンジしてみてください。
まとめ:抽象と具象を理解して自分らしい表現を見つけよう
抽象と具象の両方を理解し、それぞれの表現方法や画材の特徴を知ることは、漫画やイラスト制作の幅を広げる大切なポイントです。自分の伝えたいことや描きたい世界観に合わせて、自由に使い分けてみましょう。
最初は迷うこともあるかもしれませんが、いろいろな表現や画材を試すうちに、自分らしいスタイルが見つかるはずです。楽しみながら、ぜひチャレンジを続けてみてください。
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