「絵を描き始めたいけれど、パステル鉛筆と色鉛筆、どちらを選べばいいのか分からない」という悩みは非常に多いものです。どちらも鉛筆のような形で使いやすそうに見えますが、実は描き味や色の重なり方、仕上がりの質感には決定的な違いがあります。この記事では、それぞれの画材が持つ特徴を整理し、初心者の方でも自分にぴったりの画材を見つけられるよう、具体的な違いやおすすめの商品を詳しく紹介します。
パステル鉛筆と色鉛筆の違いは、発色とぼかしやすさで分かる
パステル鉛筆と色鉛筆の最大の違いは、芯の「成分」と「質感」にあります。見た目は似ていても、紙の上で色がどのように定着するか、また後から色を動かせるかどうかが大きく異なります。まずは、この二つの画材の根本的な違いを理解することから始めましょう。
パステル鉛筆は粉っぽい質感でやわらかく乗る
パステル鉛筆は、板パステルを鉛筆状に成形した画材です。最大の特徴は、芯が非常に柔らかく、紙に描くと粉状になって乗る点にあります。この「粉っぽさ」こそがパステル鉛筆の強みであり、指や擦筆(さっぴつ)でこすることで、色を簡単に引き伸ばしたり、複数の色を紙の上で混ぜ合わせたりすることが可能です。
発色は非常に鮮やかで、チョークのようなマットな質感が得られます。力を入れなくてもスルスルと色が乗るため、広い面積を塗る際や、空や雲のような輪郭のぼやけた表現をするのに最適です。ただし、粉状であるために定着力は弱く、描いている最中に手が触れると汚れてしまったり、完成後に色が落ちたりしやすいという側面もあります。そのため、扱いには少しコツが必要ですが、その独特の柔らかい風合いは他の画材では替えがききません。
色鉛筆は芯が締まっていて線が安定する
色鉛筆は、顔料をワックスやオイルで固めて作られています。パステル鉛筆に比べて芯が硬く締まっており、鋭く削ることで極めて細い線を描くことができます。紙の繊維に色がしっかりと入り込むため、描いた後に色が粉になって飛ぶことはほとんどありません。
色鉛筆の描き味は非常に安定しており、筆圧の強弱によって色の濃淡をコントロールしやすいのが魅力です。細かいディテールを描き込んだり、均一な面を塗ったりする作業に向いています。パステル鉛筆のように指でこすって色を広げることは難しいですが、薄く何度も塗り重ねることで、深みのある色彩や透明感のある表現が可能です。定着力が高いので、完成後に特別な処理をしなくても保存しやすいというメリットもあり、手軽に本格的な絵を楽しみたい方に支持されています。
重ね塗りの得意さが道具で変わる
重ね塗りにおいて、両者は全く異なるアプローチをとります。パステル鉛筆は「混色」が得意な画材です。紙の上で色が粉同士として混ざり合うため、新しい色を作り出すような感覚で重ねることができます。下の色を完全に隠す力(隠蔽力)も強いため、暗い色の上に明るい色を乗せてハイライトを表現することも容易です。
一方、色鉛筆は「重層(レイヤリング)」を得意とします。ワックスやオイルの成分により、下の色がうっすらと透けて見える性質があるため、青の上に黄色を重ねて緑に見せるといった、光の重なりのような美しい表現ができます。ただし、何度も塗りすぎると紙の表面がテカテカして色が乗らなくなる「ワックスブルーム」という現象が起きることもあります。パステル鉛筆は「混ぜる」、色鉛筆は「重ねる」という意識で使い分けるのがポイントです。
消しゴムでの戻しやすさにも差が出る
描き直しのしやすさも、画材選びの重要な基準です。パステル鉛筆は粉が紙に乗っているだけの状態に近いため、練り消しゴムを使えば驚くほどきれいに色を吸い取ることができます。ハイライトを入れたい場所を白く抜き直すといった作業がしやすく、修正が比較的容易な画材と言えます。
それに対して色鉛筆は、芯に含まれるワックスやオイルが紙の繊維に密着するため、一度強く描いてしまうと消しゴムで完全に消し去ることは困難です。薄く描いた部分であれば消せますが、色が残ってしまうことが多いため、慎重に描き進める必要があります。このため、計画的に細部を詰めていきたい場合は色鉛筆、描きながら形を整えていきたい場合はパステル鉛筆が使いやすいと感じるでしょう。
「漫画で何を伝えるべきか」がわかる本!
著名な先生方のお話が満載で充実の一冊。
はじめてでも選びやすいパステル鉛筆・色鉛筆おすすめ
世界中のメーカーから多様な画材が販売されていますが、ここでは特に品質が安定しており、初心者からプロまで満足できる逸品を厳選してご紹介します。
スタビロ カーブオセロ(STABILO CarbOthello)
世界中で愛されるパステル鉛筆の定番です。非常に発色が良く、チョークのようなドライな質感が特徴です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 炭のような質感と鮮やかな発色、全60色 |
| 向いている表現 | 強いコントラスト、風景画、動物の毛並み |
| 公式サイト | スタビロ公式サイト |
ファーバーカステル ピットパステル ペンシル
ドイツの老舗メーカーが作る、耐光性に優れたパステル鉛筆です。芯がやや硬めで、細部の描写にも対応します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 色褪せにくい顔料を使用、指で伸ばしやすい |
| 向いている表現 | 肖像画、精密なパステル画 |
| 公式サイト | ファーバーカステル公式サイト |
カランダッシュ パステルペンシル
スイスの高品質な画材メーカーによる最高級パステルペンシルです。顔料の濃度が非常に高く、圧倒的な美しさです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | ベルベットのような滑らかな描き心地 |
| 向いている表現 | 芸術性の高い作品、滑らかなグラデーション |
| 公式サイト | カランダッシュジャパン |
ダーウェント パステルペンシル
イギリスのメーカーによる、少し硬めの芯が特徴のパステル鉛筆です。コントロールがしやすく、パステル初心者にも扱いやすいです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 粉飛びが比較的少なく、扱いが容易 |
| 向いている表現 | ボタニカルアート、イラストの補助 |
| 公式サイト | ダーウェント公式サイト |
ホルベイン アーチスト色鉛筆
日本のメーカーによる、柔らかくしっとりとした描き味の油性色鉛筆です。混色がしやすく、日本人の好みに合う色が揃っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 芯が柔らかく、メルツ液で溶かすことも可能 |
| 向いている表現 | 柔らかなイラスト、塗り絵、混色重視の絵 |
| 公式サイト | ホルベイン公式サイト |
ファーバーカステル ポリクロモス色鉛筆
世界中のプロに愛用される、油性色鉛筆の金字塔です。芯が強く、精密な描き込みに最も適しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | 抜群の耐光性と描き味の安定感 |
| 向いている表現 | リアルな描写、工業デザイン、本格的な絵画 |
| 公式サイト | ファーバーカステル公式サイト |
三菱鉛筆 ユニカラー(100色)
日本の筆記具メーカーが作る、コストパフォーマンスに優れた色鉛筆です。100色セットは圧巻のバリエーションです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特徴 | クリアな発色と適度な芯の硬さ |
| 向いている表現 | 趣味の塗り絵、図解イラスト、多色使いの表現 |
| 公式サイト | 三菱鉛筆公式サイト |
仕上がりの印象が変わるポイントはここ
道具が違えば、出来上がる絵の雰囲気も大きく変わります。パステル鉛筆と色鉛筆、それぞれの個性を活かすことで、自分が思い描く理想のイメージに近づけることができます。仕上がりの違いを左右する具体的なポイントを見ていきましょう。
パステル鉛筆はグラデがなめらかに作れる
パステル鉛筆の最大の魅力は、境界線を感じさせないほど滑らかなグラデーションです。色を置いた後に指や布で優しくこするだけで、色が空気中に溶け込んでいくような表現ができます。夕焼けの空、柔らかい肌の質感、霧がかかったような幻想的な背景などは、パステル鉛筆の独壇場です。
複数の色を隣り合わせに塗ってから境界をぼかせば、中間色が自然に生まれ、非常に豊かな色彩表現が可能になります。また、パステル特有のマットで光を反射しにくい質感は、落ち着いた、高級感のある仕上がりをもたらしてくれます。ふんわりとした温かみのある絵を描きたい場合、パステル鉛筆はこれ以上ない選択肢となります。
色鉛筆は輪郭や細部が描き込みやすい
色鉛筆が得意とするのは、シャープな線と緻密なディテール描写です。芯が細く保てるため、動物の毛の一本一本、瞳の中の光、建物のエッジなど、はっきりとした輪郭を必要とする表現において抜群の力を発揮します。色鉛筆で描かれた絵は、どこか繊細で、カチッとした知的な印象を与えるのが特徴です。
また、色鉛筆特有の「筆跡」をあえて残すことで、スケッチのようなライブ感を出すこともできます。ハッチング(平行線を重ねる技法)を駆使すれば、単なる塗りつぶしではない、密度感のある画面を作ることができます。イラストの輪郭をしっかり取りたい場合や、写真のような写実性を追求したい場合には、色鉛筆が非常に心強い味方になります。
画用紙との相性で発色が変わりやすい
どちらの画材も、描く「紙」の影響を強く受けます。特にパステル鉛筆は、紙に「目(凹凸)」がないと粉が定着しません。そのため、表面が少しザラついた専用紙や画用紙を使うのが一般的です。紙の凹凸に粉が入り込むことで深みのある色が出るため、あえて紙の質感を活かした描き方が楽しめます。
色鉛筆も、紙の目によって表情が変わります。滑らかな紙(ケント紙など)を使えば驚くほど精緻な描写が可能ですが、粗い紙を使うと紙の白が点々と残り、素朴な風合いになります。パステル鉛筆は紙を「埋める」感覚、色鉛筆は紙の「質感と共演する」感覚と言えるかもしれません。使う紙を選ぶことも、作品の印象を決定づける重要なステップです。
定着スプレーの有無で仕上げが変わる
完成後の仕上げにも違いがあります。パステル鉛筆は粉を定着させるために「フィキサチーフ」と呼ばれる専用の定着スプレーが必須です。これを吹きかけないと、額縁に入れたり保管したりする際に色が落ちてしまいます。ただし、スプレーをかけすぎると色が少し沈んで暗くなることがあるため、加減が必要です。
色鉛筆は基本的に定着剤を必要としません。描き終わった瞬間が完成形であり、そのままの状態を長く保つことができます。この「手軽さ」は色鉛筆の大きな強みです。完成後の扱いやすさを重視するか、手はかかるけれど独特の風合いを持つパステルを追求するか、ライフスタイルに合わせて選ぶのも一つの方法です。
どっちを選ぶか迷ったときの判断軸
どちらも魅力的な画材ですが、実際に購入するとなると迷ってしまいますよね。そんなときは、「自分が何を、どんな風に描きたいか」という目的に立ち返ってみましょう。ここでは、迷いを解決するためのいくつかの基準を提案します。
ふんわり優しい雰囲気ならパステル鉛筆
もしあなたが描きたい絵のイメージが「温かみがある」「夢の中のような」「柔らかい」といったキーワードに当てはまるなら、パステル鉛筆がおすすめです。色の境界が曖昧で、優しく光を放つような表現はパステルの最も得意とするところです。絵本のような優しい雰囲気の作品を作りたい方に最適です。
指で色を直接触って伸ばす感覚は、絵を描いているという実感を強く与えてくれます。理論的に色を構成するよりも、直感的に色を混ぜ、空間を作っていく楽しさを味わいたいなら、パステル鉛筆を選んで間違いありません。
くっきり塗り分けたいなら色鉛筆
「細部までこだわりたい」「アニメや漫画のようなキャラクターを描きたい」「はっきりとした色彩が好き」という方には、間違いなく色鉛筆が向いています。境界線がはっきりしており、色が混ざりすぎない色鉛筆は、デザイン的な構成やクリアなイラストレーションに最適です。
また、外出先でスケッチをしたり、手帳に少し色を添えたりといったカジュアルな使い方にも色鉛筆は適しています。粉が出ず、道具も最小限で済むため、場所を選ばずいつでもどこでも制作に集中できるのが色鉛筆の良さです。
描くモチーフで向き不向きが分かれる
描きたいモチーフによっても、適した画材は異なります。例えば、雲や煙、遠くの山々、動物の柔らかな産毛、人の肌の柔らかい影などはパステル鉛筆が表現しやすいモチーフです。一方で、メカニックな機械、建物の幾何学的な構造、昆虫の鋭い足、金属の光沢などは色鉛筆の方が圧倒的に描きやすいはずです。
「自分が一番描きたいものは何か」を具体的に想像してみてください。ペットの優しさを描きたいならパステル、好きなキャラクターの格好良さを描きたいなら色鉛筆、といった具合に、モチーフとの相性で選ぶと失敗が少なくなります。
収納や汚れ対策の手間も考えて選ぶ
画材そのものの性能だけでなく、作業環境の維持も大切なポイントです。パステル鉛筆はどうしても手が汚れやすく、作業机の周りに粉が落ちることがあります。掃除の手間や、周囲を汚したくない環境であれば、少し躊躇するかもしれません。
色鉛筆は削りカスが出る程度で、基本的には清潔に作業を進められます。収納もコンパクトにまとまりやすく、準備や片付けが非常に楽です。自分の性格や、絵を描く場所の状況を考慮して、長く楽しく続けられる方を選んでみてください。
併用すると表現が広がる使い分けアイデア
実は、パステル鉛筆と色鉛筆は非常に相性が良く、組み合わせて使うことでそれぞれの弱点を補い、表現を劇的に進化させることができます。プロの多くも実践している、効果的な併用アイデアを紹介します。
下地をパステル鉛筆で作って雰囲気を出す
まず広い背景や、物のベースとなる大きな影の色をパステル鉛筆で薄く塗って広げます。これにより、紙の白さを一気に埋め、絵全体のトーン(雰囲気)を瞬時に決めることができます。パステルで下地を作ることで、色鉛筆だけで全てを塗るよりも時間が短縮でき、かつ深みのある背景が生まれます。
このとき、パステルは指や擦筆でしっかり紙に馴染ませておくのがコツです。その上から色鉛筆で描き込む準備が整います。下地にパステルの柔らかさがあることで、その後の描写に奥行きが出てきます。
仕上げの線や模様を色鉛筆で締める
パステルだけで描くと、どうしても全体がぼんやりとした印象になりがちです。そこで、絵の主役となる部分の輪郭や、最も細かい模様、鋭いハイライトの周辺などを色鉛筆で描き込みます。これを「締める」と言います。
パステルでぼかした柔らかい表現と、色鉛筆のシャープな線が同居することで、画面にメリハリが生まれます。視線を集めたい場所は色鉛筆でくっきり描き、それ以外はパステルで緩やかに表現するというコントラストは、非常に完成度の高い絵に見せてくれます。
ハイライトは練り消しや白で整える
パステルと色鉛筆を混ぜて使う際、ハイライトの処理は重要です。まずパステル部分を練り消しで抜き、その上から最も明るいパステル鉛筆の白を乗せます。さらにその中心に、不透明度の高い白の色鉛筆やホワイトのペンで点を入れると、キラリとした強い光を表現できます。
画材を混ぜることで、白の中にも「ぼやけた白」と「鋭い白」の使い分けができ、光の強弱をコントロールしやすくなります。この細かな調整が、作品のリアリティを底上げします。
紙目を活かす順番でムラを減らす
併用する際は「塗る順番」が大切です。基本的には、粉状のパステルを先に塗り、その後に色鉛筆を使う方がスムーズです。色鉛筆のワックス成分が先に紙に乗ってしまうと、パステルの粉が弾かれて乗らなくなることがあるからです。
ただし、あえて色鉛筆で細部を先に描き、その上からパステルで薄くベールをかけるように色を被せると、細部が霧の中に隠れるような独特の効果が得られます。自分の出したい質感に合わせて、順番を試行錯誤するのも画材選びの醍醐味です。
パステル鉛筆と色鉛筆の違いを知ると画材選びが楽になる
パステル鉛筆と色鉛筆は、それぞれに代えがたい魅力を持った素晴らしい画材です。ふんわりとした幻想的な世界を追求したいならパステル鉛筆、緻密でクリアな表現を楽しみたいなら色鉛筆、という基本を押さえておけば、もう画材店で迷うことはありません。
大切なのは、どちらが優れているかではなく、どちらが「今のあなたの描きたい気持ち」に寄り添ってくれるかです。最初はどちらか一方で始めてみて、慣れてきたらもう一方を買い足して併用してみるのも良いでしょう。道具の特性を理解することで、あなたの創造力はより自由に、より豊かに紙の上で広がっていくはずです。まずは直感で「使ってみたい」と思った方を手に取って、最初の一歩を踏み出してみませんか。“`
世界70か国で愛されるコピック!
ペンにこだわると、イラストがどんどん上達します。

