絵の具と色鉛筆はどっちが先?きれいに仕上がる順番と失敗を防ぐ塗り方のコツ

絵を描き始めるとき、透明感のある絵の具と、細かく描き込める色鉛筆の組み合わせはとても魅力的です。しかし、いざ描き始めようとすると「どっちを先に塗るのが正解なの?」という疑問にぶつかることも多いものです。実は、この順番一つでイラストの雰囲気や色の混ざり方は劇的に変わります。今回は、それぞれの画材の特性を活かし、失敗を防いできれいに仕上げるための「塗る順番」とテクニックを詳しく解説します。

目次

絵の具と色鉛筆はどっちが先?きれいに仕上げる順番の考え方

絵の具と色鉛筆を併用する場合、基本的には「絵の具が先、色鉛筆が後」という順番が推奨されることが多いです。これには、画材に含まれる成分の性質が大きく関わっています。もちろん、あえて順番を逆にすることで得られる特殊な効果もありますが、まずは基本となる考え方を押さえておきましょう。

水彩は先に絵の具が基本になりやすい

透明水彩や不透明水彩を使う場合、先に絵の具で広い面を塗り、その後に色鉛筆で細部を描き込むのが最もスムーズな流れです。水彩絵の具は水を使って紙の繊維に色を染み込ませる画材ですが、色鉛筆には「ワックス(蝋)」や「油分」が含まれています。

もし先に色鉛筆で塗ってしまうと、その油分が水を弾いてしまい、後から重ねる絵の具が紙に乗らなくなってしまいます。これを「レジスト効果」と呼びますが、意図せずに起きてしまうとムラの原因になります。

絵の具を先に塗ることで、紙の繊維がまだ開いている状態でしっかりと着色でき、その乾燥した上から色鉛筆を重ねることで、色鉛筆特有の繊細なタッチを際立たせることができます。この順番なら、水彩の柔らかなにじみと、色鉛筆のシャープな線を両立させることが可能です。

アクリルは乾いてから色鉛筆が使いやすい

アクリル絵の具は乾燥すると「固着」し、プラスチックのような耐水性の膜を作ります。この膜が完全に乾いた後であれば、その上から色鉛筆で色を乗せることが可能です。アクリル絵の具は隠蔽力が強いため、先に色鉛筆で描いた下書きや薄い色はすべて塗りつぶされてしまいます。

そのため、アクリル画において色鉛筆は「最終的なディテールアップ」や「質感の調整」として使うのが一般的です。例えば、アクリルで描いたキャラクターの瞳に輝きを入れたり、服の細かな縫い目や質感を表現したりする際に色鉛筆が活躍します。

ただし、アクリル絵の具が完全に乾いていない状態で色鉛筆を重ねると、ペン先が絵の具の層を削り取ってしまったり、芯が汚れて描けなくなったりします。アクリルを使う際は、ドライヤーなどでしっかりと乾燥を確認してから色鉛筆に持ち替えるのが、失敗しないための鉄則です。

色鉛筆を先にすると絵の具が弾きやすい

多くの色鉛筆には、芯を固めるためにワックス成分が含まれています。このワックスは強力な「撥水性(水を弾く力)」を持っているため、色鉛筆の層が厚ければ厚いほど、後から塗る水性絵の具を強く弾きます。

この性質を逆手に取り、あえて白い色鉛筆でハイライトや模様を描いておき、その上から水彩絵の具を被せることで、模様を白く浮き上がらせる「白抜き」という技法もあります。しかし、通常の着彩においてはこの弾きが仇となり、絵の具が水滴のように玉になって浮いてしまうことがあります。

また、油性色鉛筆の場合はその傾向が特に顕著です。色鉛筆を先に使いたい場合は、筆圧を極限まで弱くして紙の目(凹凸)を残すように塗るか、水に溶ける性質を持つ「水彩色鉛筆」を使用することで、絵の具との馴染みを良くすることができます。

目的が「発色」か「質感」かで順番が変わる

どちらを先にするかは、最終的にどのような画面にしたいかという「目的」によっても判断が分かれます。

鮮やかで濁りのない「発色」を重視したい場合は、まず絵の具でしっかりと下地の色を作ることが大切です。絵の具の方が一度に広い面をムラなく着色できるため、色の土台として適しています。その上から色鉛筆を重ねることで、絵の具だけでは出せない深みのある色調を作ることができます。

一方で、鉛筆の跡やザラザラとした「質感」を活かしたい場合は、あえて色鉛筆のタッチを前面に出す必要があります。この場合でも、やはり薄く絵の具を敷いてから色鉛筆を重ねる方が、紙の白さが目立たず重厚な質感になります。順番に迷ったときは「一番見せたい要素(絵の具の透明感か、色鉛筆のタッチか)」を考え、見せたい方を最後に持ってくるのが一つの目安になります。

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重ね塗りがしやすいおすすめ画材

絵の具と色鉛筆を併用する際は、重ねたときに色が乗りやすく、お互いの良さを消さない高品質な画材を選ぶことが上達への近道です。2026年現在、多くのプロが愛用するおすすめのアイテムをご紹介します。

ホルベイン 透明水彩絵の具

日本のトップメーカーであるホルベインの水彩絵の具は、顔料が非常に細かく、色鉛筆を重ねたときにその色を美しく透過させます。

項目詳細
特徴発色が鮮やかで、色の伸びが非常に良い
メリット種類が豊富で入手しやすく、色鉛筆との馴染みが抜群
公式サイトホルベイン公式サイト

ターナー アクリルガッシュ

不透明アクリル絵の具の定番です。乾燥するとマットな質感になり、色鉛筆がしっかりと引っかかる「足がかり」のある表面を作ります。

項目詳細
特徴隠蔽力が強く、どんな下地の色も隠せる
メリット乾いた後に色鉛筆が滑らず、しっかりと描画できる
公式サイトターナー色彩株式会社

三菱鉛筆 ユニカラー(色鉛筆)

日本製の高品質な色鉛筆です。芯が適度に硬く、絵の具の上からでも繊細な線を引くことができ、プロのイラストレーターにも愛用者が多いです。

項目詳細
特徴粒子の揃ったクリアな発色が特徴
メリット100色のカラーバリエーションがあり、混色がきれい
公式サイト三菱鉛筆株式会社

ファーバーカステル ポリクロモス

世界中のアーティストに愛される油性色鉛筆です。耐光性に優れ、絵の具の上に重ねても色が濁りにくい最高級の芯を持っています。

項目詳細
特徴芯が柔らかく、重ね塗りが非常にスムーズ
メリット絵の具の上でも滑らかに色が乗り、定着力も高い
公式サイトファーバーカステル日本公式サイト

カランダッシュ ルミナンス

非常に高い顔料濃度と耐光性を持つ色鉛筆です。ワックスベースですが、絵の具の上から重ねた際の発色の良さは群を抜いています。

項目詳細
特徴カバー力が高く、濃い色の絵の具の上でも発色する
メリット混色が容易で、油絵のような重厚な表現も可能
公式サイトカランダッシュ公式

ウォーターブラシ(携帯水筆)

絵の具と色鉛筆の境目をぼかしたり、水彩色鉛筆を溶かしたりするのに便利なアイテムです。

項目詳細
特徴軸に水を入れておけるので、バケツが不要
メリット色鉛筆で描いた後にピンポイントで水を使える
公式サイトぺんてる株式会社

水彩紙(中目・細目)

重ね塗りをするなら、紙選びも重要です。色鉛筆の「ノリ」を左右する、表面の凹凸(紙目)に注目して選びましょう。

項目詳細
種類中目(適度な凹凸)、細目(滑らか)
特徴厚手のものを選ぶと、絵の具の水で波打ちにくい
公式サイトミューズ(画用紙・水彩紙)

仕上がり別におすすめの順番と塗り方

あなたが描きたい絵のイメージはどのようなものでしょうか?「ふわっとした雰囲気」にしたいのか、「パキッとした力強い絵」にしたいのかによって、最適な手順とテクニックが異なります。ここでは、代表的な4つの仕上がりパターンに合わせた塗り方のコツをご紹介します。

やわらかい雰囲気なら絵の具→色鉛筆

絵本のような、優しく柔らかな雰囲気に仕上げたい場合は、「絵の具で淡く色を置き、色鉛筆で輪郭や影をそっと添える」という手順が最適です。

まず、絵の具(特に透明水彩)をたっぷりの水で溶かし、紙の白さを活かしながらふんわりと色を乗せます。このとき、ムラを気にせず、水の流れに任せるのがコツです。完全に乾いた後、形がぼやけている部分や、もう少し強調したい部分に色鉛筆で薄く線を入れます。色鉛筆の線を強く引きすぎないことで、水彩の透明感が引き立ち、空気感のある仕上がりになります。

くっきり線画なら色鉛筆→絵の具は注意

マンガやアニメ調のくっきりとした絵を、色鉛筆の線画で描きたい場合は少し注意が必要です。一般的な油性色鉛筆で線画を描き、その中を絵の具で塗ろうとすると、線が水を弾いてしまい、線の周りだけ絵の具が乗らない現象が起きます。

これを避けるためには、水溶性の性質を持つ「水彩色鉛筆」で線を描くか、あるいは絵の具を塗った後に最後に色鉛筆で線をなぞり直す方が、仕上がりは格段にきれいになります。もしどうしても先に色鉛筆で線を引きたい場合は、ペン型の「耐水性ミリペン」などで主線を描き、絵の具で着彩した後、仕上げの表情付けとして色鉛筆を使うのが現代のイラスト制作では一般的な手法です。

影や質感は最後に色鉛筆で乗せる

絵のクオリティを一気に引き上げるのが、最後に色鉛筆で入れる「影」と「質感」の表現です。絵の具は大まかな明暗をつけるのは得意ですが、細かいテクスチャ(物の質感)を出すのは技術が必要です。

そこで、絵の具でベースの影を塗った上から、色鉛筆で細かいハッチング(斜線)を重ねたり、紙の目を活かしてザラッとした質感を加えたりします。例えば、果物の表面の細かな点々や、布の縫い目、木材の木目などを最後に色鉛筆で描き足すだけで、絵の密度が上がり、非常に完成度の高いイラストになります。

ハイライトは白鉛筆かガッシュで整える

絵の最後に「光」を入れる工程は、最も楽しい瞬間の一つです。色鉛筆セットに入っている「白」をいつ使えばいいか迷う方も多いですが、これはベースの色(絵の具)を塗った後に、一番明るい部分を「明るく塗りつぶす」ために使います。

透明水彩の場合は一度塗ると白く戻すのが難しいため、白の色鉛筆で上からハイライトを書き加えるのが便利です。ただし、色鉛筆の白は隠蔽力がそこまで強くないため、もっとパキッとした強い光(瞳のハイライトなど)を入れたい場合は、不透明な「ホワイトのガッシュ(絵の具)」を筆の先に取って、点置きするのが一番効果的です。

うまく重ならないときの原因と対処法

「絵の具の上から色鉛筆で描こうとしても、色が全然乗らない!」そんなトラブルに直面したときは、いくつかの原因が考えられます。解決策を知っておけば、せっかくの作品を台無しにせずに済みます。

紙がツルツルだと乗りにくいことがある

色鉛筆は、紙の表面にある微細な凹凸(歯)に芯の粒子が引っかかることで発色します。そのため、表面が非常に滑らかなケント紙や、絵の具を厚塗りして表面がツルツルにコーティングされてしまった状態では、色鉛筆が滑ってしまい、色が定着しません。

この場合の対処法は、紙を変えるか、あるいは「メディウム」を活用することです。水彩紙の中でも「中目」など適度な凹凸があるものを選ぶと、絵の具の後でも色鉛筆がよく乗ります。もし既に塗ってしまった後で色が乗らないときは、ツヤ消しの「マットバーニッシュ」などを薄くスプレーすると、表面に微細な引っ掛かりができ、再度描き込めるようになることがあります。

絵の具が乾く前に重ねると濁りやすい

初心者に最も多い失敗が、絵の具がまだ湿っている状態で色鉛筆を重ねてしまうことです。水を含んだ紙は非常にデリケートなため、色鉛筆の芯先で紙をこすると、紙の表面が毛羽立ってボロボロになってしまいます。さらに、湿ったインクと色鉛筆の芯が混ざり合い、色が黒ずんで濁ってしまう原因にもなります。

「もう乾いたかな?」と思っても、紙の芯まで乾いていないことがあります。手で触れてみて、ひんやりと感じる場合はまだ水分が残っています。焦らずに、自然乾燥かドライヤーを使って、完全にカラッとした状態になるまで待ってから色鉛筆を手に取りましょう。

色鉛筆の油分で弾くなら軽いタッチにする

色鉛筆で何度も同じ場所を塗り重ねると、表面がワックスでコーティングされたような状態になり、テカテカしてきます。これを「ワックスブルーム」と呼びますが、この状態になると、それ以上色鉛筆を重ねることも、後から絵の具を塗ることもできなくなります。

油分で弾かれてしまうときの対処法は、色鉛筆のタッチを最初から最後まで「軽く」保つことです。筆圧をかけすぎず、薄い層を何度も積み重ねるように塗ることで、油分の膜が厚くなりすぎるのを防ぎ、絵の具とも馴染みやすくなります。もしテカってしまった場合は、練り消しゴムで軽く叩くようにして、余分な油分を吸い取ると少し改善されます。

定着させたいならフィキサチフも検討する

最後に色鉛筆で仕上げをした後、そのままにしていると、手が触れた際に色が伸びてしまったり、他のページに色が移ってしまったりすることがあります。特に色鉛筆を厚く塗った部分は、摩擦に弱いです。

完成した大切な作品を保護したいなら、「フィキサチフ(定着液)」をスプレーすることをおすすめします。フィキサチフは透明な樹脂の膜で粉状の画材を紙に固定してくれます。ただし、一気に吹きかけると絵の具の色が変わってしまうことがあるため、30cmほど離して、霧をくぐらせるように数回に分けて薄く吹き付けるのがコツです。

絵の具と色鉛筆の順番で迷ったときのまとめ

絵の具と色鉛筆の併用で迷ったときは、まず「絵の具が先、色鉛筆が後」という基本の順番から試してみてください。絵の具で全体のトーンを整え、色鉛筆で命を吹き込む――この役割分担を意識するだけで、あなたのイラストは見違えるほど立体的で、質感豊かなものに変わります。

画材に「絶対にこうしなければならない」という絶対的なルールはありませんが、画材の性質(水と油の関係)を知っておくことで、無用な失敗を避け、描くことそのものをもっと楽しめるようになります。今回ご紹介した画材やテクニックを参考に、自分なりのベストな順番を見つけてみてください。きっと、今までにない新しい表現に出会えるはずです。“`

世界70か国で愛されるコピック!
ペンにこだわると、イラストがどんどん上達します。

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この記事を書いた人

漫画やアートで「これってどうしてこんなに心を動かされるんだろう?」と考えるのが好きです。色の選び方や構図、ストーリーの展開に隠れた工夫など気づいたことをまとめています。読む人にも描く人にも、「あ、なるほど」と思ってもらえるような視点を、言葉で届けていきたいと思っています。

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