クロッキーはどこから描くのが正解?バランス良く形を捉えるための描き順のコツ

短時間でモデルの形を捉えるクロッキーは、画力を向上させるための素晴らしい練習法です。しかし、いざ白い紙を前にすると「どこから描き始めればいいのか」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。描き始める場所を固定することで、制限時間内に全身を収め、バランスの取れた絵を描けるようになります。今回は、形が取りやすくなる具体的な順番と、練習を支えるおすすめの道具をご紹介します。

目次

クロッキーはどこから描くと形が取りやすい?

クロッキーにおいて描き出しの場所は、その後のバランスを左右する重要なポイントです。細かなパーツに囚われすぎると、制限時間内に描き終わらなかったり、紙の中に全身が入りきらなかったりする失敗が起きてしまいます。どこから描くかをあらかじめ決めておくことで、脳の迷いを取り除き、モデルのポーズや動きの本質を素早く捉えることができるようになります。

まずは全体のアタリで大きさを決める

クロッキーを始める際、最初の一筆でいきなり輪郭線を描き始めるのではなく、まずは「画面のどこに、どれくらいの大きさで描くか」というアタリを付けましょう。具体的には、紙の上端(頭のてっぺん)と下端(足の先)を点や短い線で決めます。この「境界線」を先に引いておくことで、描き進めるうちに足が紙からはみ出してしまうといったミスを防ぐことができます。

全体の大きさが決まったら、次に頭部、胸部、骨盤の3つの大きな塊がどの位置に来るかを、楕円などのシンプルな形で配置します。この段階では細かな筋肉や服のシワは一切無視して構いません。箱や球体で捉えるようなイメージで、空間の中に人物が立っている「ボリューム」を感じ取ることが大切です。

この全体のアタリに使う時間は、1分クロッキーなら最初の5秒から10秒程度です。短時間で「ここからここまでが体」という枠組みを意識するだけで、その後の描き込みが驚くほどスムーズになります。大きな視点で捉える習慣を付けることが、形を正確に取るための第一歩となります。

顔より胴体から入るとバランスが崩れにくい

多くの人がやってしまいがちな失敗が、頭や顔のパーツから描き始めてしまうことです。顔は情報量が多くて描きやすいため、つい熱中してしまいますが、頭部の大きさを基準に全身のバランスを取るのは非常に難易度が高い作業です。顔に時間を使いすぎると、体が小さくなったり、逆に手足が異常に長くなったりして、全体の整合性が取れなくなってしまいます。

バランスを安定させるには、頭部を軽く配置した直後に「胴体(胸部と骨盤)」の向きと傾きを捉えるのがコツです。胴体は体の中心であり、重心を支える最も大きなパーツです。この大きな塊がどう傾いているかが決まれば、首の角度や脚の踏み出し方も自然と決まってきます。

特に、肩のラインと腰のラインが「並行か、それとも反発しあっているか」を観察してください。胴体から描き始めることで、人物の重心がどこにあるかが明確になり、ポーズの安定感が格段に増します。顔の表情などは、全体のバランスが整った後に、時間が余れば書き加える程度の優先順位で進めると、クロッキーとしての完成度が高まります。

背骨ラインを先に取るとポーズが伝わる

ポーズの勢いや「流れ」を表現するためには、背骨のライン、いわゆる「ライン・オブ・アクション」を意識して描くことが非常に効果的です。モデルがどのような曲線を描いて動いているのかを、後頭部から背骨を通り、尾てい骨まで繋がる一本の線で捉えてみましょう。この線がポーズの芯となります。

背骨はまっすぐな棒ではなく、ポーズに合わせてS字やC字にしなります。このしなりを強調して描くことで、静止画であっても動き出しそうな躍動感が生まれます。特にひねりのあるポーズや、前屈み、仰け反りなどの動作では、この背骨のラインがすべての形の基準となります。

背骨のラインを先に引いておくと、そこに肋骨の籠や骨盤のバケツを「通していく」感覚で描けるようになります。人体をバラバラのパーツの組み合わせとして見るのではなく、一本の太い流れとして捉えることで、解剖学的な正しさ以上に「その人らしさ」や「ポーズの魅力」が伝わる絵になります。

手足は最後に当てはめると迷いが減る

手や足は表現力が豊かですが、関節が多く、パース(奥行き)も複雑なため、描き始めると非常に時間がかかってしまいます。胴体のバランスが決まっていないうちに手足を詳しく描こうとすると、全体のポーズと整合性が取れなくなり、何度も描き直す羽目になります。そのため、手足は「胴体から生えている棒」として最後の方に配置するのが賢明です。

最初は一本の線や、細長い円筒形で「どの方向にどれくらいの長さで伸びているか」だけを記します。肘や膝の関節位置を点で見当をつけたら、それらを繋いで骨組みを作ります。手首から先の掌や、足首から先の足の甲などは、最後に三角形や四角形の単純な面で付け足すだけで、十分にポーズのニュアンスは伝わります。

手足の描き込みは、全身のシルエットが完成した後のボーナスタイムのようなものだと考えましょう。指の一本一本を丁寧に描くことよりも、肩から指先までがどのような弧を描いているかという「方向性」を重視することで、クロッキー特有の迷いのない、潔い線が引けるようになります。

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クロッキー練習が続けやすいおすすめ道具

クロッキーは「数を描くこと」が上達の鍵です。そのため、使う道具は「気楽に使えること」と「描き心地が良いこと」を重視して選びましょう。高級な画材を揃える必要はありませんが、自分の手に馴染む道具があると、毎日の練習がぐっと楽しくなります。2026年現在も支持され続けている、定番のアイテムをご紹介します。

マルマン クロッキーブック(SM・SSサイズ)

クロッキーといえばこの一冊といわれるほど、世界中で愛されているロングセラー商品です。薄くて滑らかな紙質は、素早いペンの動きを妨げません。

項目詳細
商品名クロッキーブック アンチークレイド
サイズ展開SM(大)、SS(小)など豊富
特徴紙が薄く、大量に描いてもかさばらない
公式サイトマルマン株式会社 公式サイト

鉛筆 2B〜4B(ラフが出しやすい)

クロッキーには、力を入れなくてもスルスルと描ける柔らかい芯の鉛筆が向いています。芯を少し長めに出して、寝かせながら描くと面の表現も可能です。

項目詳細
おすすめ硬度2B / 3B / 4B
ブランド三菱鉛筆 ハイユニ / ステッドラー ルモグラフ
特徴筆圧の強弱がそのまま線の表情になる
公式サイト三菱鉛筆株式会社 公式サイト

シャープペン(0.5mm)+替芯

削る手間を省きたいなら、シャープペンも優秀なクロッキー道具になります。芯の硬さを「B」や「2B」にすることで、鉛筆に近い柔らかな描き心地が得られます。

項目詳細
おすすめ芯径0.5mm / 0.7mm
特徴常に一定の太さで描けるため、細部の確認に便利
メリット外出先などでも手軽に練習できる
公式サイトぺんてる株式会社 公式サイト

練り消しゴム(形を残して修正できる)

普通の消しゴムと違い、紙を傷めにくく、トントンと叩くようにして線を薄くできるのが練り消しゴムの魅力です。

項目詳細
特徴自由な形に変形でき、ピンポイントで修正可能
メリットカスが出ないため、部屋を汚さず練習に集中できる
公式サイト株式会社シード(消しゴム専門メーカー)

ペン(ゲル・サインペン)線を割り切れる

あえて「消せない」ペンで描くことで、一本の線に対する集中力を高める練習になります。迷い線を減らし、決断力を養うのに最適です。

項目詳細
おすすめゼブラ サラサクリップ / ぺんてる サインペン
効果描き直しができないため、形を捉える目が厳しくなる
公式サイトゼブラ株式会社 公式サイト

タイマーアプリ(30秒〜2分で回す)

クロッキーに制限時間は不可欠です。スマートフォン向けの専用アプリや、WEBサイトの自動ポーズ表示サービスを活用しましょう。

項目詳細
人気サービスPosemaniacs / Line-of-Action
機能指定した間隔で自動的にモデル画像が切り替わる
特徴自分で時間を測る手間が省け、リズム良く描ける
公式サイトPosemaniacs(ポーズマニアックス)

描く順番を固定すると上達しやすい流れ

クロッキーの上達を早めるためには、制限時間ごとに「どこまで描くか」の目標を決めておくのが有効です。時間が短いほど、本質的な動きを捉える力が養われ、時間が長いほど、構造的な理解が深まります。ここでは、30秒から2分までのステップを例に、効率的な描き方の流れを解説します。

30秒はジェスチャーで動きを取る

30秒という極めて短い時間では、細かな形を描くことは不可能です。この時に集中すべきは、モデルの「ジェスチャー(身振り)」です。頭から足先までの大きな流れを数本の曲線だけで描く「アクションライン」の手法を使いましょう。

棒人間よりもさらにシンプルな、水の流れやバネの動きを写し取るような感覚で描きます。関節が曲がっている、体重がどちらに乗っている、といった「ポーズの意味」が一目で伝われば合格です。30秒クロッキーを繰り返すと、脳が情報を取捨選択し、最も重要な「動きの核心」を素早く掴めるようになります。

細部にこだわって線が途切れるよりも、一本の長い線で全身の勢いを一気に描くことを意識してください。この「流れ」を捉える力が、後から丁寧な描き込みをした際にも、絵が硬くならずに生き生きとした印象を与える土台となります。

1分は肩幅と骨盤で比率を決める

1分間のクロッキーでは、動きに加えて「人体の比率」を意識し始めます。頭部の配置が終わったら、すぐに「両肩を結ぶ線」と「骨盤の幅と傾き」を描き込みましょう。この二つのラインの距離と角度が決まると、人物のパース(奥行き)や捻りが明確になります。

上半身と下半身のボリューム比を正しく捉えることが、1分クロッキーの目標です。余裕があれば、胸郭と骨盤をそれぞれの「塊」として肉付けしていきます。この段階で、モデルが画面の中で安定して立っている(または座っている)状態を作ることができれば、バランスの取れた絵になります。

1分は意外と短いため、やはり手足の指先や顔のパーツは省略します。その代わり、首の付け根から肩へのラインや、足の付け根のV字など、人体の主要なランドマークを正確に置く練習を積むことで、構造的な説得力が備わってきます。

2分は関節位置まで入れて整える

2分あれば、人体の構造をかなり詳細に追いかけることができます。ジェスチャーと比率を決めた後、肘、膝、手首、足首といった「関節」の位置を具体的にプロットしていきます。関節の位置が正確であれば、多少肉付けが甘くても、ポーズに違和感が出ることはありません。

関節を打点した後は、筋肉の膨らみや服の大きな重なりを線で拾っていきます。モデルが力を入れている部分や、重力がかかって弛んでいる部分など、解剖学的な特徴を少しずつ反映させましょう。2分クロッキーは、素早い捉え方と正確な描写を繋ぐ、非常に重要なトレーニングになります。

この時間帯でも、一本の綺麗な線でなぞることに固執しすぎないようにしてください。複数の線が重なっても構わないので、正しい形を探り当てる感覚でペンを動かします。全体を見渡し、左右の脚の長さが合っているか、頭の位置は不自然でないかを確認しながら、形を整えていく余裕を持ちましょう。

最後に影を1か所だけ置いて立体にする

どの時間設定でも、最後に「影」を一か所だけ書き加える習慣をつけると、絵の立体感が一気に増します。一番濃く影が落ちている部分(わきの下、脚の付け根、接地している足元など)を、鉛筆を寝かせてサッと塗りつぶします。

線だけで描かれた絵は、時に「平面的」に見えてしまいますが、一か所でも強い影が入ることで、そこに光が存在することが証明され、空間の奥行きが生まれます。影を置く場所を探す作業は、モデルの立体構造を深く観察することにも繋がります。

「どこに体重が乗っているか」を示す接地部分の影は特におすすめです。地面と足の境界線を暗くすることで、人物がしっかりと地面に立っているという実在感を出すことができます。最後の5秒を使って、最も印象的な暗い部分を一つ選んで塗ってみてください。

うまくいかないときの原因と立て直し方

クロッキーを続けていると、「どうしても形が歪んでしまう」「時間内に終わらない」という壁にぶつかる時期が必ず来ます。しかし、それらは描き方の癖や考え方を少し変えるだけで、簡単に解決できることが多いです。うまくいかない原因を客観的に分析して、前向きに練習を続けられるような立て直し方を学びましょう。

小さく描きすぎると狂いが増えやすい

初心者の方に多いのが、クロッキーブックの隅に小さく描いてしまうことです。絵が小さくなると、ペン先のわずかなズレが大きな比率の狂いとなって現れます。また、手首だけで描いてしまうため、線の勢いが失われ、こぢんまりとした硬い絵になりがちです。

狂いを減らすためには、紙いっぱいに「大きく描く」ことを意識してください。肩や肘を大きく使って線を引くことで、伸びやかで力強い線が生まれます。大きな画面で描くと、どこがズレているかが一目で分かるようになるため、自己修正のスピードも上がります。

もし大きく描くのが怖いと感じるなら、あらかじめ紙に大きく「ここからここまで描く」という枠線を引いてから始めましょう。物理的なスペースを強制的に使うことで、視点が広がり、全身のバランスをダイナミックに捉える訓練になります。

線を追いかけるより面で捉えると早い

モデルの輪郭線ばかりを追いかけて描こうとすると、部分的な形に囚われすぎて、全体の繋がりを見失ってしまいます。線はあくまで「面と面が切り替わる境界」に過ぎません。特に短時間のクロッキーでは、人体を「円筒」や「箱」の集合体として捉える「面」の意識を持つと、描くスピードが劇的に上がります。

例えば、腕を描くときに輪郭の二本線を引くのではなく、腕というボリュームが空間のどの方向を向いているかを考えます。光の当たっている面、影になっている面を意識すると、少ない手数で立体的な形を表現できます。

シルエットを一つの塊として塗りつぶす「シルエットクロッキー」を取り入れるのも良い方法です。線の情報を取り去り、外側の形(ネガティブスペース)だけに注目することで、人体のプロポーションをより正確に認識できるようになります。

途中で消しすぎると時間が足りなくなる

クロッキーの練習中に消しゴムを頻繁に使うのは、あまりおすすめできません。描き直すたびに時間が削られるだけでなく、自分の描いた「間違った線」という貴重な記録が消えてしまうからです。クロッキーは、一回で正解を書く練習ではなく、間違いを繰り返しながら正解に近づくプロセスを楽しむものです。

間違えたと思ったら、その線は残したまま、その上から「正しいと思う線」を力強く引き直してください。複数の線が残っていることで、後から見返したときに「自分はどこをどう間違えやすいのか」という傾向を分析できるようになります。

消しゴムを使わない練習は、一本の線に対する決断力を養います。どうしても気になって集中できない場合以外は、練り消しゴムを手元に置かないくらいの気持ちで取り組むと、結果として時間内に描き切るスキルが早く身につきます。

失敗クロッキーはメモで原因を残す

「今日は全然うまく描けなかった」と落ち込んで終わりにするのはもったいないことです。納得のいかないクロッキーこそ、上達の種が詰まっています。描き終えた後、自分の絵の隣に「頭が大きすぎた」「重心がズレている」「肩の傾きを見逃した」といった反省点を一言メモとして残しましょう。

言葉にして言語化することで、脳にその課題が深く刻まれます。次の日の練習を始める前に、前日のメモを読み返すだけで、同じミスを繰り返す確率はぐっと下がります。クロッキーブックを、単なる絵の練習帳ではなく「成長の記録ノート」として活用しましょう。

また、たまには時間をかけずに描いた絵を他人に見てもらったり、写真に撮って客観的に眺めたりするのも効果的です。自分の癖を把握することは、苦手を克服するための最短ルートになります。失敗を歓迎し、それを分析する余裕を持つことが、長続きする秘訣です。

クロッキーでどこから描くか迷ったときのまとめ

クロッキーは、どこから描き始めるかという「自分なりの定石」を持つことで、迷いが消え、純粋に観察に集中できるようになります。全体のアタリを決め、胴体の塊を配置し、背骨の流れを通す。このステップを繰り返すうちに、あなたの目と手は驚くほどのスピードで連動し始めます。

上達を急ぐあまり、完璧な絵を目指す必要はありません。大切なのは、毎日数分でも良いので継続すること、そして「どこから描こうかな?」というワクワク感を忘れないことです。お気に入りのクロッキーブックと鉛筆を手に、まずは今日の一人目から描き始めてみてください。一歩ずつ、しかし確実に、あなたの表現力は磨かれていくはずです。

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ペンにこだわると、イラストがどんどん上達します。

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この記事を書いた人

漫画やアートで「これってどうしてこんなに心を動かされるんだろう?」と考えるのが好きです。色の選び方や構図、ストーリーの展開に隠れた工夫など気づいたことをまとめています。読む人にも描く人にも、「あ、なるほど」と思ってもらえるような視点を、言葉で届けていきたいと思っています。

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