抽象画は「何を描いているのか分からなくて難しそう」と感じる方も多いですが、その自由な表現力や独自の魅力に惹かれる人も増えています。形にとらわれず、色や線、質感を楽しむ抽象画は、初心者でも気軽に触れることができ、自分らしい感性で鑑賞や制作を楽しめます。
この記事では、抽象画の基本から歴史、代表的な画材や有名画家の作品まで、幅広く分かりやすく解説していきます。インテリアや趣味として抽象画に興味がある方にも役立つ内容をお届けします。
抽象画とはわかりやすく解説する基本と魅力

抽象画は、私たちが普段目にする風景や人物などを、そのままの形や色で表現しない独特の絵画です。自由な発想と多様な表現が魅力となっています。
抽象画の定義と特徴をやさしく説明
抽象画とは、現実に存在するものをそのまま描かず、色や形、線などの要素だけを使って表現する絵画です。たとえば、木や花、人物を描くのではなく、それらを思わせる色の重なりや線の組み合わせによって、画家が感じた印象やイメージを表現します。
このため、抽象画には「正解」がありません。見る人によってさまざまな解釈ができ、自由な発想で楽しむことができます。また、色彩や構図、質感のバランスが重要で、作り手の個性や感性が表れやすいのも特徴です。難しく考えず、なんとなく惹かれる作品や、心が動く色づかいを見つけることが抽象画の楽しみ方の一つです。
具象画との違いを知ろう
具象画は、花や風景、人物など目に見えるものをそのまま表現する絵画です。写実的で分かりやすい表現が多く、誰が見てもイメージしやすいのが特徴です。一方、抽象画は具体的なモチーフにとらわれず、画家の感情やイメージ、色彩などが主役になります。
下の表で違いを整理してみましょう。
項目 | 抽象画 | 具象画 |
---|---|---|
表現対象 | 形や色、線など | 実際にある物や人 |
イメージ | 見る人によって異なる解釈 | 誰でも想像しやすい |
特徴 | 意味より印象や感情が重視 | 具体的な物語や意味が明確 |
このように、具象画と抽象画は表現方法も楽しみ方も異なります。どちらにも良さがあり、自分の感性に合う作品を探してみるのもおすすめです。
初めてでも楽しめる抽象画の見方
抽象画を見るときは、「何が描かれているのか」を探すのではなく、まずは色や形のバランス、全体から受ける印象を感じてみましょう。素直に「好き」「面白い」と思える作品を見つけることが大切です。
また、気になる作品があったら、画家のタイトルやコメントを参考にしつつ、自分なりのイメージや感情を重ねてみると、より深く楽しめます。展覧会や美術書をきっかけに、同じ作品を何度か見返すことで、新しい発見があることも多いです。難しくとらえず、自由な気持ちで鑑賞してみてください。
抽象画が心に訴えかける理由
抽象画は、見る人の心に直接訴えかける力を持っています。それは、具体的なモチーフや物語に縛られない分、自分だけの感情や思い出を自由に重ね合わせられるからです。色の配置や線の流れ、質感の違いが、言葉では説明できない感覚を呼び起こすこともあります。
また、抽象画を眺めていると、心が穏やかになったり、逆に刺激を受けたりと、自分でも気づかなかった感情に出会えることがあります。忙しい日々の中で、抽象画を通してリラックスしたり、新しい自分を発見できるのも大きな魅力です。
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抽象画の歴史と発展の流れ

抽象画が生まれた背景や時代の流れ、世界や日本でどのように進化してきたのかを知ることで、作品への理解がより深まります。
抽象画誕生の背景と時代
19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパでは社会や文化が大きく変化し、芸術の世界でも新しい表現が求められるようになりました。それまでは目の前の現実をいかに正確に描くかが重視されていましたが、写真技術の発明により、写実的な絵画の役割が変化したこともきっかけの一つです。
画家たちは、現実をそのまま描くだけでなく、心の中のイメージや感情を表現する新しい方法を模索しはじめました。こうした流れの中から、従来の枠にとらわれない抽象画のスタイルが生まれていきました。
キュビズムや表現主義の登場
20世紀初頭、ピカソやブラックによって生み出された「キュビズム」や、感情表現を重視する「表現主義」といった新しい美術運動が次々と登場しました。キュビズムでは、物の形を分解し、異なる角度から見た面を組み合わせて構成することで、従来の絵画では見られなかった独自の表現が生まれました。
一方、表現主義は、現実の形よりも画家の内面や感情を強調する傾向がありました。これらの動きが、後の抽象画の発展に大きな影響を与えました。特に、具象から抽象への移行を後押しした重要な流れといえます。
20世紀における抽象美術の進化
20世紀に入ると、抽象美術はますます多様化し、世界中の画家がさまざまなスタイルを生み出しました。ワシリー・カンディンスキーやピエト・モンドリアンといった画家たちは、形や色だけで音楽のようなリズムや秩序を表現しようと試みました。
また、第二次世界大戦後のアメリカでは、激しい動きや偶然性を取り入れた「アクションペインティング」も登場し、抽象画はより自由な表現の場となりました。こうした進化は、現代アートにも大きな影響を与え続けています。
日本における抽象画の発展
日本の抽象画は、戦後の美術界を中心に本格的に発展しました。海外の美術運動の影響を受けつつも、日本独自の感性や伝統的な美意識が融合した作品が数多く生まれています。
とくに1950年代の「具体美術協会」などが中心となり、自由な発想と実験的な表現を追求する動きが広がりました。日本の抽象画は、世界的にも高く評価されており、現代でも多くの作家が新しい表現に挑戦し続けています。
抽象画の主な種類と代表的なスタイル

抽象画にはさまざまなスタイルがあります。それぞれの特徴や魅力を知ることで、鑑賞の幅が広がります。
キュビズムとはどんな表現か
キュビズムは、20世紀初頭にピカソとブラックによって生み出された美術のスタイルです。この表現では、物をさまざまな角度から見た形に分解し、それを再構成して一つの画面にまとめます。従来の遠近法や立体感を重視する絵画とは異なり、平面的で幾何学的なイメージが特徴です。
キュビズムは、現実をそのまま描くのではなく、「どう見えるか」「どう感じるか」という画家の視点を強調します。こうした表現は、後の抽象画や現代アートに大きな影響を与えました。
純粋抽象絵画の特徴
純粋抽象絵画は、現実の物や風景を一切描かず、形や色、線だけを使って構成された作品です。たとえば、カンディンスキーやモンドリアンのように、音楽や秩序、バランスを意識して構成された作品が代表的です。
このスタイルでは、鑑賞者が自分自身の感情やイメージを自由に重ね合わせられるため、見る人によって作品の解釈が大きく変わるのも特徴です。純粋抽象絵画は、アートの本質や表現の可能性を追究する流れの中で生まれ、今も多くの画家に影響を与えています。
新造形主義や構成主義のアプローチ
新造形主義(デ・ステイル)や構成主義は、20世紀前半のヨーロッパで生まれた美術の潮流です。新造形主義は、モンドリアンを代表とし、赤・青・黄の原色と直線だけで絵を構成するシンプルさが特徴です。秩序や調和を重視し、無駄のないデザインが目を引きます。
一方、構成主義は、形や色を組み合わせて合理的に画面を組み立てることを重視します。どちらも、芸術と社会、デザインと日常生活とのつながりを意識した表現が多く、現代の建築やグラフィックデザインにも影響を与えています。
抽象表現主義とアクションペインティング
抽象表現主義は、1940年代から1950年代にアメリカで発展した芸術のスタイルです。感情や直感を重視し、画家自身の動きや勢いがそのまま作品に表れる点が大きな特徴です。この中でも「アクションペインティング」は、筆や手、時には絵の具を直接キャンバスに投げつけるなど、パフォーマンス性の高い技法が用いられます。
ジャクソン・ポロックが代表的な作家で、偶然性や即興性を生かした表現が評価されています。見る側も、作品のリズムやエネルギーを直感的に感じ取ることができるため、印象的な体験になります。
抽象画を描くための画材と選び方

抽象画を始めるには、画材選びも大切です。自分の表現に合った画材を見つけることで、制作の楽しみがぐっと広がります。
絵具や画用紙の種類と特徴
抽象画に使われる絵具には、アクリル絵具や油絵具、水彩絵具などさまざまな種類があります。アクリル絵具は乾きが早く、重ね塗りやテクスチャー作りに向いています。油絵具は深い色合いやグラデーションを表現しやすく、じっくり時間をかけて描きたい方に合っています。水彩絵具は透明感や軽やかな表現に適しています。
画用紙やキャンバスも大切な要素です。厚手の紙やキャンバスは、絵具をしっかり受け止め、思い切った表現に向いています。一方、色紙や水彩紙は繊細な表現におすすめです。用途や描きたいスタイルに合わせて選びましょう。
筆やパレットナイフの活用法
筆にはさまざまな形や大きさがあり、細い線から太いストロークまで幅広く表現できます。毛先が柔らかい筆はなめらかな色のぼかしやグラデーションに、硬めの筆は力強いタッチや質感の表現に向いています。
一方、パレットナイフは、絵具を塗りつけたり削ったりして立体感を出すのに最適です。面を大きく塗る、厚みをつけるなど、抽象画のダイナミックな表現によく使われます。両方を使い分けることで、表現の幅が広がります。
初心者におすすめの画材セット
初めて抽象画に挑戦する方には、必要な道具が一通りそろった画材セットがおすすめです。アクリル絵具セットや水彩絵具セットには、基本の色と筆、パレットなどが入っているものが多く、すぐに制作を始められます。
以下のようなセットが人気です。
- アクリル絵具12色+筆3本+パレット
- 水彩絵具12色+筆2本+水彩紙
- キャンバスボード+油絵具セット
迷った場合は、お店のスタッフに相談したり、レビューを参考に選ぶと安心です。まずは気軽に試して、画材の感触を楽しんでみましょう。
デジタル抽象画のためのツール
最近では、パソコンやタブレットを使って抽象画を描く人も増えています。主なデジタルツールには、イラスト制作ソフト(Adobe Photoshop、Procreateなど)やスタイラスペン、液晶タブレットがあります。直感的な操作で自由に色や形を試せるのが魅力です。
デジタルなら、何度もやり直しができるので、初心者でも安心してチャレンジできます。紙や絵具の準備がいらないので、手軽に抽象画を楽しみたい方にもおすすめです。
有名な抽象画家と代表作品
抽象画の歴史を彩る有名な画家や、彼らの代表的な作品について知ることで、鑑賞の楽しみが深まります。
カンディンスキーと抽象のパイオニア
ワシリー・カンディンスキーは、抽象画の先駆者として知られるロシア出身の画家です。彼は「音楽のような絵画」を目指し、色や形の組み合わせだけでリズムや感情を表現しようとしました。代表作には「コンポジションVII」や「即興シリーズ」などがあります。
カンディンスキーの作品は、現実の形から離れていても、独自の世界観や美しさが感じられます。抽象画の新たな表現を切り開いた存在として、美術史に大きな足跡を残しています。
ピエト・モンドリアンの幾何学アート
ピエト・モンドリアンは、オランダ出身の画家で、新造形主義の代表格です。彼は赤・青・黄の原色と黒い直線だけを使った抽象画で有名です。「コンポジション」シリーズは、極限までシンプルに構成された美しさが特徴です。
モンドリアンの作品は、絵画だけでなく、インテリアやファッション、デザインの分野にも影響を与えています。明快な構成と色づかいは、現代アートの象徴ともいえる存在です。
ジャクソン・ポロックとアクションペインティング
アメリカの画家ジャクソン・ポロックは、アクションペインティングの代表的な作家です。キャンバスを床に置き、絵具を滴らせたり投げつけたりして描く独特の技法で、ダイナミックな抽象画を多く生み出しました。「ナンバー31」や「ブルー・ポールズ」などが有名です。
彼の作品は、偶然と即興性、画家自身の動きがそのまま作品に現れる点が魅力です。ポロックのアプローチは、抽象画の新しい可能性を切り開きました。
日本の抽象画家が切り拓いた世界
日本でも、多くの抽象画家が独自の表現を追求してきました。例えば、白髪一雄は、足で絵具をキャンバスに広げる独特の技法で海外でも高く評価されました。また、吉原治良や堂本尚郎といった作家も、具体美術協会を中心に自由な制作を展開しました。
彼らの作品は、日本の伝統的な美意識や現代的な感覚を融合させた独自の世界観が特徴です。世界の美術界でも注目される存在となっています。
抽象画の楽しみ方とインテリア活用
抽象画は、鑑賞だけでなく、生活空間や趣味としてもさまざまな楽しみ方があります。日常に取り入れるコツやアイデアを紹介します。
鑑賞を日常に取り入れるコツ
抽象画を身近に楽しむには、まずはお気に入りの作品をポストカードや小さな複製画で飾ってみるのがおすすめです。毎日目にする場所に飾ることで、自然と色や形に親しむことができます。
また、美術館やギャラリーで実物を見る機会を増やすのも効果的です。作品に触れることで、新しい発見や感動があります。自分だけの「好き」を見つけて、日常に取り入れてみましょう。
インテリアとして飾るアイデア
抽象画は、インテリアのアクセントとしても人気があります。シンプルな部屋には、鮮やかな色遣いの抽象画を飾ることで、空間が一気に華やかになります。反対に、落ち着いた色やモノトーンの抽象画を選ぶと、スタイリッシュで洗練された印象になります。
飾る場所や額縁を工夫すると、雰囲気が大きく変わります。リビングや玄関、寝室など、暮らしの中のさまざまなシーンに合わせて楽しめるのも抽象画の魅力です。
抽象画を自分で描く楽しさ
抽象画は、絵の経験がなくても気軽に始めやすいアートです。形や色を自由に組み合わせ、思いのままに表現できるので、ストレス解消やリフレッシュにもなります。失敗を気にせず、まずは筆や手で色をキャンバスに広げるだけでも十分に楽しめます。
自分で描いた作品を飾ったり、友人にプレゼントしたりと、作品を通して新しいコミュニケーションも生まれます。自分だけのアート作品を作る楽しさをぜひ体験してみてください。
アートイベントや展覧会の楽しみ方
抽象画に親しむには、アートイベントや展覧会に足を運ぶのもおすすめです。作家の生の作品にふれることで、写真では伝わらない色や質感、エネルギーを感じることができます。
また、ワークショップや体験イベントに参加すると、実際に画材を使って抽象画を描く楽しさを体験できます。新しい出会いや刺激を得ながら、アートの世界をより身近に感じてみましょう。
まとめ:抽象画は自由な発想で誰でも楽しめるアート
抽象画は、形や意味にとらわれず、色や線を自由に楽しめるアートです。歴史やスタイル、画材の特徴を知ることで、さらに深く味わうことができます。鑑賞や制作を通じて、自分だけの感じ方や表現を楽しめるのが抽象画の魅力です。
日常に抽象画を取り入れて、心豊かなアートライフを始めてみましょう。
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