アクリル絵の具は発色が美しく、使い勝手もよいため多くの漫画家やイラストレーターに親しまれています。しかし、紙やキャンバスに描くとき「もっと質感を出したい」「乾くのが早すぎて困る」「表面をなめらかに塗りたいけれどムラができる」といった悩みがつきものです。
そんなときに役立つのが「メディウム」です。アクリル絵の具と組み合わせることで、表現の幅を広げたり作業のしやすさを高めたりできます。この特集では、初心者にも分かりやすくアクリルメディウムの基本から使い方、選び方や便利なコツまで詳しくご紹介します。
アクリル絵の具に使えるメディウムとは何か基本を知ろう

アクリルメディウムは、アクリル絵の具の表現や使い勝手を柔軟に調整できる助けになるアイテムです。初心者が悩みやすいポイントや、絵のクオリティを高めるためのヒントも押さえながら、メディウムの基本を見ていきましょう。
メディウムの役割とアクリル絵の具との関係
メディウムは、アクリル絵の具の性質を変化させるために加える補助材です。たとえば、絵の具に混ぜることで「伸び」を良くしたり、乾燥の速さやツヤの加減を調節したりできます。透明感を増やしたり、絵の具の粒子を安定させる効果もあります。
また、紙やキャンバスへの定着力を上げたり、質感を変えたりするためにもメディウムは役立ちます。普通のアクリル絵の具だけでは表現できないような厚みやマットな仕上がり、さらにはコラージュや立体感をつけることが可能になるため、創作の幅が大きく広がります。絵を描くうえで「もっとこうしたい」と思ったとき、メディウムを試してみるのが一つの選択肢となります。
メディウムの種類ごとの特徴と違い
アクリルメディウムにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。代表的なものを簡単な表にまとめました。
種類 | 主な効果 | 使い方の例 |
---|---|---|
ジェッソ | 下地作り | キャンバスや紙に塗る |
モデリングペースト | 厚み・立体感 | 盛り上げて描く |
ジェルメディウム | 粘度・透明感 | コラージュや重ね塗り |
スロードライ | 乾燥遅延 | グラデーション作成 |
グロスバーニッシュ | 光沢仕上げ | 絵の表面に塗る |
このように、種類ごとに用途や効果が異なるため、目的に合わせて選ぶことが大切です。メーカーによって微妙な質感や仕上がりも異なるので、少量ずつ使い比べてみるのもおすすめです。
アクリル絵の具にメディウムを使うメリット
メディウムを使う一番のメリットは、アクリル絵の具だけでは難しい表現ができることです。たとえば、立体感を強調したり、絵の具を厚く重ねて独特な質感を出したりできます。透明感を調整したり、表面のツヤを変えることも可能です。
さらに、作業効率を上げられるのもポイントです。乾燥時間を調整できれば、グラデーションや混色も自由に楽しめます。紙やキャンバスの吸い込みをコントロールできるので、ムラなくきれいに塗ることができ、完成度の高い作品づくりにつながります。
メディウムを使うときの注意点とよくある疑問
メディウムは便利ですが、使い方を誤ると思ったような仕上がりにならないこともあります。特に「入れすぎると絵の具の定着が悪くなる」「使いすぎでひび割れが生じる」といったトラブルが起こることがあります。使用量の目安を守り、少しずつ加えることが大切です。
また「どんな順番で塗るべきか」「混ぜるタイミングはいつがよいか」といった疑問も多いです。メーカーごとに推奨の使い方が記載されているので、事前に説明を読んでおくと安心です。不安な場合は、まず小さな面積でテストしてから本番に使うと失敗が少なくなります。
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代表的なアクリルメディウムと使い方のコツ

ここからは、具体的なメディウムごとの特長や、初心者でもすぐに試せる使い方のポイントを紹介します。道具選びや表現の幅を広げるヒントも合わせてチェックしましょう。
ジェッソで描く前の下地を作るポイント
ジェッソは、アクリル絵の具を塗る前にキャンバスや紙に塗る下地材です。主に表面の吸い込みを調整し、絵の具がしっかり定着するように助けます。薄く均一に塗ることで、表面の凹凸をなめらかに整えることができます。
塗るときは平筆やスポンジを使い、2〜3回重ね塗りをするとより理想的な下地が作れます。乾燥後に軽くサンドペーパーをかけると、さらに滑らかな仕上がりになります。紙の場合は、裏まで染み込まないように注意しながら薄く塗るのがコツです。
モデリングペーストで立体感を出す方法
モデリングペーストは、ペースト状のメディウムで、厚く盛ることで絵の表面に立体感を出せます。パレットナイフやヘラで好きな形に盛り上げ、乾燥後そのまま絵の具で色をつけられます。
厚く塗るほど乾燥に時間がかかるため、あまり一度に盛り上げすぎず、数回に分けて作業するのがおすすめです。ペーストが乾くとしっかり固まり、表面に独特のテクスチャが現れるので、影や光の表現に活用できます。彫刻的な表現や漫画の背景にもよく使われています。
ジェルメディウムで表現の幅を広げるテクニック
ジェルメディウムは、アクリル絵の具に混ぜることで粘度を調整し、透明感や厚みを持たせるメディウムです。絵の具が滑らかに伸びるため、重ね塗りやグラデーションに向いています。透明な仕上がりにしたいときは、ジェルメディウムの割合を多めにするのがポイントです。
また、コラージュの糊代わりや、紙片・布地などさまざまな素材との組み合わせにも適しています。筆やパレットナイフで混ぜ具合を調整し、好みの質感を見つけるのも楽しい工程です。
グロスバーニッシュで仕上げの光沢を調整する
グロスバーニッシュは、仕上げに使う透明なニスのようなメディウムです。絵の表面に薄く塗ることで、光沢やツヤを調整でき、画面全体が美しくまとまります。ホコリや汚れから作品を保護する効果もあります。
使うときは、乾いた絵の上に薄く均一に塗るのが基本です。厚塗りするとムラや気泡ができやすいので、平筆やスポンジでやさしく伸ばしましょう。マットタイプを選べばつや消し仕上げも可能で、作品の雰囲気に合わせて選ぶとよいでしょう。
表現力を高めるアクリルメディウム活用術

アクリルメディウムは、ただ混ぜたり塗ったりするだけでなく、工夫次第でさまざまな表現が可能です。ここでは、仕上がりや作業性をさらに高める活用方法をご紹介します。
乾燥時間を調整するスロードライメディウムの使い方
アクリル絵の具は速く乾くため、グラデーション作りや広い面でのぼかしが難しいことがあります。スロードライメディウムを混ぜれば、乾燥時間が長くなり、ゆっくり色をなじませたり細部を修正できる時間が増えます。
使い方は、パレット上で適量を絵の具に混ぜるだけです。混ぜすぎると乾きにくくなるため、まずは絵の具に対して1割程度から試し、作業しやすいバランスを見つけてください。特に広い面の塗りや繊細な色の変化を出したいときに重宝します。
メディウムで質感やテクスチャを変化させる
メディウムの種類を使い分けることで、作品の質感や表面の変化を自在にコントロールできます。たとえば、マットメディウムを使うと落ち着いたつや消しの仕上がりに、グラスビーズ入りメディウムを使えばザラザラした独特の手触りが生まれます。
組み合わせ次第で、今までにない質感や立体感が演出できるのも魅力です。漫画の背景や効果線、特殊な演出などにも応用できるため、自分らしい表現を追求したい方におすすめです。試し塗りで感触を確かめながら、気に入ったテクスチャを探してみましょう。
コラージュや接着剤としてのメディウム活用法
ジェルメディウムやグロスメディウムは、紙や布、小物などのコラージュにも使えます。素材同士をしっかり貼り合わせたり、表面をコーティングして保護する用途にも適しています。普通の糊よりも透明度が高く、仕上がりがきれいです。
使い方は、貼りたいパーツの裏側と土台の両方に薄く塗り、しっかり押さえた後に乾燥させます。上から塗ればコーティング効果も加わり、摩擦や汚れにも強くなります。漫画原稿やイラストに異素材を組み合わせたいとき、メディウムが一役買ってくれます。
メディウムを混ぜる割合と失敗しない配合のコツ
メディウムとアクリル絵の具の配合割合は、用途や求める仕上がりによって変わります。基本的には「絵の具:メディウム=2:1」程度からスタートし、徐々に調整すると失敗しにくいです。
混ぜすぎると発色や定着力が弱くなりやすいので、最初は少量ずつ加えて様子を見るのがおすすめです。表に簡単な目安をまとめました。
目的 | 絵の具 : メディウム | ポイント |
---|---|---|
下地作り | 1 : 2〜3 | 薄く均一に塗布 |
透明感アップ | 2 : 1 | 少しずつ混ぜる |
乾燥遅延 | 10 : 1 | 入れすぎ注意 |
慣れてきたら自分の作風や用途に合わせて、細かく配合を調整していくとより理想の効果が得られます。
メディウム選びで迷わないメーカー別おすすめガイド

ここでは、アクリルメディウムの代表的なメーカーと、その特徴や選び方を分かりやすく解説します。はじめての方でも選びやすいよう、人気ブランドや初心者向けセットも紹介します。
リキテックスのアクリルメディウムの特徴と選び方
リキテックスは、アクリル画材で定番のブランドです。メディウムの種類が豊富で、初心者からプロまで幅広く使われています。ジェッソやモデリングペースト、グロス・マットメディウムなど、用途にあわせて選べます。
特に「リキテックス・レギュラータイプ」は粘度調整や下地作りに便利で人気です。ボトルやチューブの形状も使いやすいので、手軽に試したい方や細かい調整をしたい方にも向いています。カラーバリエーションも多く、表現の幅を広げたい方におすすめです。
ホルベインのメディウムラインナップと使い分け
ホルベインのアクリルメディウムは、発色の良さと使いやすさが特徴です。とくに「アクリリックメディウムシリーズ」は、下地用のジェッソ、透明感を高めるグロスメディウム、質感がユニークなペーストタイプが揃っています。
素材や用途ごとに細かく種類が分かれているため、使い分けがしやすいのが魅力です。初心者向けのセットも用意されており、基本のメディウムをまとめて試せるので迷ったときに便利です。濃度や伸びのバランスもよく、スムーズな作業をサポートしてくれます。
ターナーや海外ブランドの人気メディウム比較
ターナーやゴールデン、ウィンザー&ニュートンといった海外ブランドも高品質なメディウムを展開しています。ターナーはコストパフォーマンスに優れ、手に入りやすいので初心者にも人気です。
一方、海外ブランドのメディウムは独自の質感や仕上がりが楽しめるものも多いです。例えば、ゴールデンのジェルやペーストはプロのアーティストにも支持されています。ブランドごとに色味や仕上がりが微妙に異なるので、いろいろ試してみて自分に合ったものを見つけるのもおすすめです。
初心者におすすめのメディウムセットと選び方
はじめてアクリルメディウムを使う場合は、基本がそろった「スターターセット」がおすすめです。主に以下のアイテムが含まれています。
- ジェッソ(下地作り用)
- ジェルメディウム(粘度調整・コラージュ用)
- グロスメディウム(ツヤ出し用)
セットを選ぶ際は、「用途の幅」「価格」「容量」のバランスをチェックしましょう。少量から試せるミニセットや、異なるメディウムを組み合わせたパック商品もあるので、自分の目的や作風に合ったものを選ぶと安心です。
アクリルメディウムを使いこなすための実践アドバイス
メディウムは使い方次第で幅広い表現が楽しめます。ここでは、作業の流れや応用テクニック、トラブル対策、便利な道具など実践的なアドバイスをまとめました。
基本の使い方とステップアップする応用例
まずはメディウムの基本的な使い方から始めましょう。パレットにアクリル絵の具とメディウムを出し、よく混ぜてから筆やナイフで塗ります。下地作り、粘度やツヤの調整、乾燥時間のコントロールが主な使い方です。
慣れてきたら、複数のメディウムを組み合わせて独自の質感や立体感を表現してみましょう。例えば、下地にジェッソを塗り、乾燥後にモデリングペーストで凹凸を作り、仕上げにグロスバーニッシュで光沢を加えるといった応用が可能です。
より美しく仕上げるための実践的テクニック
美しい仕上がりを目指すなら、塗りむらや気泡を避けるために薄く丁寧に塗ることがポイントです。乾燥時間をしっかり守り、次の工程に進む前に完全に乾かしましょう。
また、筆やパレットナイフの使い分けも大切です。広い面は大きな筆、細かい部分や盛り上げ表現には小さなナイフやヘラが適しています。色ごと・質感ごとに使う道具を分ければ、よりクリアで美しい仕上がりが得られます。
よくあるトラブルとその解決方法
メディウム使用時によくあるトラブルには「ひび割れ」「ムラ」「気泡」「ベタつきが残る」などがあります。ひび割れは厚塗りや乾燥不足が主な原因なので、適度な厚みと十分な乾燥が大切です。
ムラや気泡は、塗る前によく混ぜることと、薄く均一に塗ることを心がければ防げます。ベタつきが残る場合は、乾燥の時間や気温・湿度にも注意しましょう。結果が安定しないときは、メーカーの説明書やQ&Aを参考にするのも有効です。
あると便利な関連画材や道具の紹介
メディウムを使いこなすには、以下のような道具があると便利です。
- パレットナイフ:ペースト状のメディウムを盛る、混ぜる
- サンドペーパー:下地や乾燥後の表面仕上げ
- 各種筆:広い面、細部、特殊な質感ごとに使い分け
- ミストスプレー:作業中に表面を湿らせて乾燥を遅らせる
他にも、使い捨てパレットやラップ、マスキングテープなども重宝します。用途や作品の規模にあわせて、必要な道具をそろえておくと作業がスムーズに進みます。
まとめ:アクリル絵の具のメディウムで表現力と創作の幅を広げよう
アクリルメディウムは、絵の具の基本的な性能を引き出し、さらに個性豊かな表現を可能にします。初心者からベテランまで、使い方や組み合わせ次第で新しい描画の世界が広がります。
まずは基本のメディウムから試し、自分が表現したい雰囲気や仕上がりに合わせて少しずつレパートリーを増やしていくのがおすすめです。さまざまな種類・メーカーのメディウムを活用しながら、創作の楽しさや表現の幅をより深く味わってみてください。
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