版画を始めてみたいと思っても、どんな技法があるのか、どんな道具を用意すれば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。絵を描くのが苦手と感じている方でも、版画なら新鮮な表現を手軽に楽しむことができます。
この記事では、初心者にもやさしい簡単な版画の基礎から、必要な画材や道具、仕上げのコツまで、疑問をひとつずつ丁寧に解決しながらご紹介します。これから版画を始めたい方や、新しい趣味を探している方に役立つ内容です。
簡単版画の基礎知識と楽しみ方

版画は紙と道具があれば、どなたでも気軽に始められるアート表現のひとつです。絵を描くことに自信がない方も、型を使うことで独特の雰囲気や味わいを楽しめます。
版画とは何か
版画は、彫刻や切り抜きなどで作成した「版」という型を通して、紙や布に絵柄を写し取る技法です。一度版を作れば、同じ絵柄を何枚も印刷できるため、ポストカードやオリジナル作品づくりにもぴったりです。
版画にはさまざまな種類があり、代表的なものに木版画、リノリウム版画、スチレン版画、紙版画、ステンシル版画などがあります。それぞれ作り方や表現に特徴があり、初めての方でも自分に合った方法を選びやすいのが魅力です。
版画と絵画の違い
版画と絵画の大きな違いは、作品を作る工程と仕上がりの特徴にあります。絵画は直接紙やキャンバスに色をのせていきますが、版画はまず「版」を制作し、それを使って絵柄を紙に写すという段階を踏みます。
また、版画は一度作った版を使って複数の作品を作ることができます。そのため、同じデザインを何枚も作成したいときや、贈り物用に作品を量産したい場合にも適しています。さらに、版を作ることで偶然生まれる独特の質感や表現も、版画ならではの魅力といえるでしょう。
初心者におすすめの簡単版画技法
初めて版画に挑戦する場合、手軽に始めやすい技法を選ぶと失敗が少なく楽しめます。特にスチレン版画や紙版画は、カッターや専用の刃物を使わずに作れるため、お子さまや初心者に人気があります。
たとえばスチレン版画は、発泡スチロールの板に鉛筆やペンで絵を描き、その凹みにインクをのせて紙に写す方法です。紙版画は、厚紙や画用紙などを切り貼りして版を作るため、工作感覚で取り組めるのが特長です。どちらも身近な材料で始められるので、ぜひ気になったものから試してみてください。
版画制作の基本的な流れ
版画づくりの基本的な流れは、以下の手順です。どの技法でも、大まかな工程は共通しています。
- 下絵を描く
- 下絵を版に写し取る
- 版を彫る・作る
- インクや絵の具をつける
- 紙に刷り写す
- 乾燥させて完成
このように、事前にイメージをしっかり作っておくと、作業もスムーズに進みます。刷る回数や色を工夫することで、一つひとつ違った表情の作品にもなります。
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代表的な版画技法と特徴

版画にはいくつかの主要な技法があり、材料や作り方によって表現の幅が広がります。ここでは代表的な版画の特徴や作り方を詳しくご紹介します。
木版画の魅力と作り方
木版画は、木の板を彫って「版」を作る伝統的な技法です。木目の風合いや彫り跡が独特の雰囲気を生み出し、日本の浮世絵などでも有名です。
作り方は、まず版木に下絵を写し、彫刻刀で不要な部分をしっかり彫り取ります。その後、彫らずに残った部分にインクや絵の具をのせ、紙を重ねてばれんなどでこすって転写します。繰り返し刷ることで、色の違いや複数の作品づくりも楽しめます。木版画は細かい作業が多いですが、仕上がりの温かみが魅力です。
スチレン版画の手軽さとポイント
スチレン版画は、発泡スチロール製の薄いシートを使う方法で、初心者や子どもでも安全に楽しめます。刃物を使わず、鉛筆やボールペンで直接絵を描くだけなので、気軽にトライできます。
作り方は、スチレンシートに絵を描き、凹んだ部分が白く残る仕組みです。その後、ローラーやスポンジでインクを広げ、紙に重ねて押さえるだけで印刷できます。繊細な線にはなりにくいですが、柔らかい表現やポップなデザインによく合います。必要な道具も少なく、使い終わったら手入れも簡単です。
紙版画で広がる表現方法
紙版画は、厚紙や画用紙などを切ったり貼ったりして版を作る、自由度の高い技法です。パーツごとに違う紙を重ねることで、簡単に色や質感を変えられます。
たとえば、動物や花のモチーフをパーツで分けて作り、貼り合わせて版を完成させます。そのあと、インクや絵の具をローラーや筆でのせ、紙に写し取ります。切り抜きや重ね方を工夫することで、コラージュのような楽しい作品になります。特に子どもたちの創造力を伸ばす活動としてもおすすめです。
ステンシル版画の簡単な始め方
ステンシル版画は、型紙を使って絵柄を紙や布に写すシンプルな方法です。カッターなどでイラストを切り抜いた型紙を使い、スポンジや筆でインクを上からポンポンと乗せていきます。
この技法は、複雑な準備がいらず、失敗しにくいのがメリットです。Tシャツやトートバッグなど、布製品にも応用できるので、オリジナルグッズづくりにもぴったりです。細かい部分は慎重に型紙を作ることが、きれいに仕上げるコツです。
版画制作に必要な画材と道具

版画づくりには技法に合わせた道具や材料が必要です。ここでは初心者が揃えやすい基本の画材や、おすすめのアイテムについてご紹介します。
初心者向け版画セットの選び方
初めて版画を始める場合、必要な道具がひと通り揃った初心者向けセットを選ぶと便利です。セット内容は技法によって異なりますが、以下のようなものが一般的です。
セット内容 | 対応技法 | 特徴 |
---|---|---|
木版画セット | 木版画 | 彫刻刀やばれん、インクなど基本が揃う |
スチレン版画セット | スチレン版画 | スチレンシートやインク、ローラー入り |
紙版画セット | 紙版画 | 厚紙やローラー、インクがセット |
選ぶ際は、自分が挑戦したい技法に合った内容かを確認し、必要な道具が含まれているかチェックしましょう。不要な道具が入っていないシンプルなセットも便利です。
版画に使う紙や和紙の種類
版画に使う紙は、インクのノリや仕上がりに大きく影響します。和紙や洋紙など種類も豊富で、それぞれに特徴があります。
- 和紙:柔らかくインクがよく染み込み、優しい風合いの作品に仕上がります。木版画や落ち着いた表現におすすめです。
- 洋紙(画用紙など):手軽に使え、発色も良いので初心者やスチレン版画に適しています。
- 厚紙:紙版画の版そのものや、丈夫な作品作りに向いています。
使いたい技法や好みの質感に合わせて選ぶと、より満足のいく仕上がりになります。
あると便利な道具とその使い方
基本の道具以外にも、作業を快適にする便利グッズがあります。下記の例を参考にしてください。
- ローラー:インクや絵の具を均一にのばすために使います。版全体にムラなく色を広げるのに役立ちます。
- ばれん:紙と版をしっかりと密着させて刷る道具です。木版画には欠かせません。
- ピンセット:細かいパーツの貼り付けや位置調整に便利です。
- スポンジ:ステンシル版画のインクのせや、グラデーション表現に使えます。
道具によっては代用品でも十分楽しめます。例えば、ばれんの代わりにスプーンの背を使うなど、身近なものを工夫するのもよい方法です。
画材の保管方法とメンテナンス
道具や画材の保管には、清潔さと整理整頓が大切です。使用後のインクや絵の具はきちんとフタをし、乾燥を防ぎましょう。
彫刻刀やカッターは、刃先に注意して専用ケースやカバーにしまうことで安全に保管できます。ローラーやばれんなどは、使い終わったらすぐに水洗いし、よく乾かしてから保管すると長持ちします。定期的なお手入れで、次回も気持ちよく作業が進められます。
版画作品をより美しく仕上げるコツ

せっかく作るなら、できるだけ美しく仕上げたいものです。ここでは、プロのような仕上がりを目指すための工夫やテクニックをご紹介します。
下絵と写し取りの工夫
下絵は仕上がりの印象を決める重要な工程です。はじめに薄い鉛筆で描き、バランスや配置を何度か調整すると納得のいく下絵になります。
下絵を版に写すときは、トレーシングペーパーを使うと便利です。下絵をなぞって写し、反転させて版に転写することで、文字や左右対称の図案もしっかり仕上がります。特に、仕上がりをイメージしながら写し取りの工夫をすることで、完成度が高まります。
彫りと刷りのポイント
彫刻刀やカッターを使う場合、無理に力を入れず、ゆっくり丁寧に彫ることが大切です。細い線や細かい部分は、刃を小刻みに動かすことで失敗を減らせます。
一方、刷りの工程では、インクを薄くのばしてムラなく版にのせることがポイントです。紙を重ねたら、ばれんやスプーンで全体を均等に押さえます。どちらもゆったりとした気持ちで作業すると、きれいな仕上がりになります。
色付けやグラデーションのテクニック
一色だけでなく複数の色を使ったり、グラデーションをつけると、作品の表現がぐっと広がります。ローラーを使って2色のインクを隣り合わせにのせ、境目をなじませることで、自然なグラデーションが生まれます。
また、乾いたあとに細かい部分だけ色を重ねたり、スポンジで軽くたたいて柔らかいぼかしを加える方法もあります。実際に何度か刷り直してみることで、自分だけの色表現が見つかります。
仕上げと保存のアドバイス
刷ったあとの作品は、平らな場所で十分に乾かすことが大切です。乾燥が不十分だとインクがにじむ原因になります。
完成した作品は、透明なファイルや額に入れて保存すると長持ちします。また、直射日光のあたらない場所に保管すると、色あせや変色を防ぐことができます。作品ごとに日付やタイトルを記入し、記念として残すのもおすすめです。
版画をもっと楽しむためのアイデア
版画の楽しみ方は無限大です。季節ごとのイベントや、家族や友人と一緒にアレンジを加えることで、より思い出に残る作品づくりができます。
季節や行事に合わせた題材例
版画は季節感や行事をテーマにすると、より身近に感じられます。たとえば、春は桜や草花、夏は海や花火、秋は紅葉やハロウィン、冬は雪だるまやクリスマスなど、モチーフを選ぶ幅が広がります。
行事に合わせてカードやしおりを作り、家族や友達に贈るのも素敵な活用法です。季節ごとに制作を楽しむことで、年ごとの成長や思い出が形に残ります。
子どもや初心者向けのアレンジ
小さなお子さまや初心者がより楽しく取り組むためには、安全な材料や簡単な工程を選ぶと安心です。スチレン版画や紙版画は、カッターを使わずに作れるので、工作感覚で挑戦できます。
型紙やシールを使ってアレンジしたり、余った紙や布を組み合わせてコラージュ風に仕上げたりするのもおすすめです。自由な発想を大切にしながら、楽しく作品づくりが進められます。
オリジナル作品の販売や展示方法
完成した版画作品は、SNSでシェアしたり、ハンドメイドマーケットや地域のギャラリーで展示・販売することもできます。写真に撮ってポートフォリオを作ると、自分の成長を感じられます。
展示や販売の際は、作品の説明や制作意図を簡単に添えることで、見る人に魅力が伝わりやすくなります。価格や出品方法は、他の作家さんの事例を参考にするとスムーズです。
失敗しないためのよくある質問Q&A
- Q:版画の下絵がうまく写せません。
A:トレーシングペーパーやカーボン紙を使うと、きれいに転写しやすいです。
- Q:インクがにじんでしまいます。
A:刷る前にインクの量を調整し、紙をしっかり押さえてみてください。
- Q:作品が曲がってしまいました。
A:乾かすときは平らな場所に置き、重しをのせると反りを防げます。
そのほか、気になることがあれば、道具の使い方や材料の特徴を見直すことで失敗を減らすことができます。
まとめ:簡単版画は誰でも楽しく始められるアート
版画は、特別なスキルや道具がなくても始めやすいアートです。手軽な材料や技法で、初めての方でもオリジナリティあふれる作品づくりを楽しめます。
季節やイベントに合わせてテーマを決めたり、家族や友人と一緒に作業したりと、楽しみ方もさまざまです。ぜひご自身のペースで、世界にひとつだけの版画作品を作ってみてはいかがでしょうか。
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